何度も殴り、殴り返した二人

　姉と妹。すずもそう思っているんだと闘いながらジュリアは感じた。ファーストコンタクト、すずの張り手から気持ちがこもる。何度も殴り、殴り返す。大技を決めてもフィニッシュにはつながらない。ジュリアは言う。

「感情のままに闘ってましたね。作戦とか、ああしよう、こういう試合をしようというのはまったくなかった」

　リーグ公式戦規定の試合時間、15分は短すぎた。時間切れ引き分け。ジュリアの決勝進出が決まったが、2人の決着はつかなかった。

「これまでは妹。でもこれからはライバルです。いちプロレスラーとして見て、心も含めてやっぱり強いなと。離れていた3年間、背負ってきたものがあるというのを感じました」とジュリア。すずはこう語る。

「この試合で溝が完全に埋まったわけではないです。でも憎しみみたいなものは晴れたかな。久しぶりにシングルやって、ここからですね。物語が動き出したなって」

殴り続けたすず、抱きしめたジュリア

　試合終了寸前、すずはひたすらジュリアを殴り続けた。ジュリアはそれを受け続け、ゴングが鳴るとすずを抱きしめた。「あの時に抱き返せなかった自分がいましたね」とすず。

「それは“終わりたくない、終わらせたくない”という気持ちがあったから。握手もしなかった」

　かわりにすずは人差し指を立てた。「もう一回」という意味だ。ジュリアも人差し指を立てる。

「これからはライバルとしてよろしく、と。対等にリングで向き合う関係ですね」（すず）

　少し感覚が違う部分もあった。

「これからはライバルだけど、タッグを組んだりもしてみたいです」　

　そう語ったのはジュリア。すずはタッグを組んだり、一緒に食事をしたりといった関係はまだ考えられないという。

「だって3年分の思いがあるんですよ。15分で伝え切れるわけないじゃないですか。まだまだリングで会話がしたいです。3年間こんなことがあったんだよ、こんな気持ちだったんだよって」

ジュリアとすずが作っていく未来

　7月の名古屋大会では、凶器の使用が認められるハードコアルールのタッグマッチで対戦した両者。ジュリアは「シングルで闘う前に、自分の知らない鈴季すずを感じたかった」と語っている。

「だけど、その後も私以外の選手とハードコアやりましたよね、ジュリア。意外にハマってるんじゃないの？（笑） でもそうだろうなと思いますよ。1回だけとか、中途半端な気持ちでハードコアやるような選手じゃないですから、ジュリアは。ハードコアでシングルやる可能性もあると思います」（すず）

　まだ語りきれていない過去がある。同時にこれから作っていく未来もある。ただ、もう憎まれ口を叩いたり乱闘をしたりする必要はない。たぶん最初からなかったのだ。

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