濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「プレッシャーも凄かったはず」フワちゃんデビュー戦で見えた“プロレスへの本気度”…師匠が明かす舞台裏「100点満点。努力の成果です」
posted2022/10/24 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
タレントでYouTuberのフワちゃんが、スターダムのリングでプロレスデビューを果たした。9月11日の大会で本人がリングに登場し参戦発表すると、当然のように賛否両論となった。
芸能人がプロレスデビューすることは珍しくない。スターダム自体、グラビアアイドルの愛川ゆず季がプロレスデビューしたことがきっかけになって生まれた団体だ。またアクトレスガールズという団体は、演劇やアイドルの世界から選手候補をスカウト。中野たむやなつぽい、ひめか、現アイスリボン王者の安納サオリといった人気レスラーを輩出している。
もちろん「プロレスは芸能人が片手間にできるようなものなのか」という否定的な見方もある。試合や練習ぶりを知らなくても言える批判だから、つまりは偏見混じりでもあるのだが。
フワちゃんの場合は“テレビの人気者”だから反響が大きく、それだけ批判も大きかったし偏見が強かった。レスラーデビューが番組『行列のできる相談所』の企画だったからなおさらだ。企画スタートから5カ月間、練習に励んできたが、それはそれで「プロレスラーってたった5カ月の練習でなれるもんなの?」と言われてしまう。おそらく7カ月でも8カ月でも同じことを言われる。
指導した葉月が感じた「フワちゃんの才能」
そんな中で「試合をすれば批判はひっくり返せる」と言い続けた選手がいた。スターダムの前タッグ王者である葉月だ。彼女は団体のコーチを務めてもいる。フワちゃんの指導も担当し、努力についても才能についても絶賛していた。
「フワちゃんはもう、プロレスの才能の固まりですね。“芸能人が中途半端にやってるだけだろ”と思う人もいるでしょうけど、全然そんなことないです。フワちゃんの才能は運動神経と負けん気。普通なら尻込みするようなことも“一回やってみます”とトライできるんです。やってみて納得できなかったら何回でもやりますし」
本人が一生懸命だから、周りも本気になった。ある日、葉月は試合を終え、バックステージでコメントすると大会の途中で会場を後に。スタッフがこっそり教えてくれた。
「実はこれから、フワちゃんの練習なんです」
道場での葉月は、フワちゃんを一般の練習生と同じように厳しく扱った。プロレスはケガがつきものだし、最悪の場合は命に関わるから「軽く教える」というのは無理だった。デビュー戦の前日には最後の追い込み練習。「フワちゃんが“やりたいです”と言ってついてきてくれるからできたことです」と葉月は言う。