濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「燃え尽きるさまを見てほしい」米AEWで活躍、日本でも2冠の志田光が「日本の女子プロレスが世界最高」と語る理由
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/10/14 17:03
米国AEWで活躍しながら、日本の団体にも参戦している女子レスラーの志田光
古巣アイスリボンの救世主に
古巣のアイスリボンには「同期のつっか(藤本)を助けたい」と出場するようになった。昨年末に選手が大量離脱。シングル王者の春輝つくしも引退した。藤本は結婚を機に選手としては休業。手薄になったリング上、志田はまさに救世主だった。
3月の初戦は藤本とのタッグ「マッスルビーナス」を再結成。藤本の休業前ラスト大会では対戦した。タッグ王座を獲得したのは9月24日の後楽園ホール大会。パートナーはアイスリボン新世代の中心選手である星いぶきだ。シングルで対戦した直後、いぶきからパートナーに指名された。
いぶきにとっての志田は、超えなくてはならない壁だ。志田もいぶきが気になっていた。「これからのアイスリボンで中心になるのはいぶき。そう確信してます」とさえ言う。
「いぶきにはチョップという大きな武器がある。ダメージが凄いしお客さんも沸く素晴らしい技です。試合をする上での絶対的な軸があるから、自信を持って闘えるんだと思います。
ただ、チョップは3カウントを奪う技ではないですし“チョップ以外に何があるの?”となると心許ないところもあって。まだまだ伸びしろがある選手なので、私と闘ったり組んだりして成長してくれたらなと」
ベルトを奪った相手は星ハム子と真琴のタッグ。志田のバックアップを得て、最後はいぶきが母であるハム子をフォールした。若いいぶきが結果を出したのは、志田にとっても嬉しいことだった。
「一回アイスリボンをぶっ壊すくらいでいい」
だが、ここから先は未知の領域だ。「それをいぶきが分かってるのかどうか」と志田は言う。
「私と組んでチャンピオンになったということは、タッグベルトのうち1本はアメリカにあるということ。いつも組むというわけにはいかないし、防衛戦も前哨戦なしのぶっつけ本番になると思います。いぶきは私がいない大会でも“タッグ王者”の肩書きで闘っていかなきゃいけない。もちろんチャンピオンである以上はいつでも負けられない。大変だと思いますよ」
通常興行でのいぶきは“パートナー不在のタッグ王者”になる。その変則的な事態を団体もいぶき自身もどう乗り越えるか。予測がつかないからこそ面白いとも言える。
「これからアイスリボンがどうなるか、誰にも分からない。大事なのは若い選手がどんどん前に出ること。私がアイスリボンに所属していた時代も、さくらさんたちが辞めて人が減ったんですよ。それからつっかが取締役になって、私はコーチをやることになって。
つっかが全体を見て支えてくれたからではあるんですけど、私は当時の状況を“いろんなことを変えていくチャンスだ”と思いました。今の選手にもそう思ってほしいですね。うまくいかなかったら、一回アイスリボンをぶっ壊すくらいでいい。リング上だけじゃなく運営体制まで含めて、壊したほうがいいなら壊してしまおうと。私はそれくらいの気持ちでアイスリボンに上がってます」