濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「燃え尽きるさまを見てほしい」米AEWで活躍、日本でも2冠の志田光が「日本の女子プロレスが世界最高」と語る理由
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2022/10/14 17:03
米国AEWで活躍しながら、日本の団体にも参戦している女子レスラーの志田光
志田が考える、“日本の女子プロレス”
志田の言う“日本の女子プロレス”とはどんなものだろうか。海外のファンからも「JOSHI」と呼ばれる独自性はどこにあるのか。
「まずはハードヒットなことですよね。バチバチに打ち合うんです。それも含めて感情むき出しの闘いになるというのも特徴だと思います」
日本の女子プロレスは自然と激しい攻防になる。喜怒哀楽すべてをリングで見せる。その根本には、団体が新弟子を一から育てるシステムがあるのではないかと志田は見ている。アメリカにはレスリングスクールがあり、日本でも「通い」の練習生が増えたが、ベーシックなのは寮生活によるプロレス漬けの生活。練習生や新人は寝食をともにし、練習で切磋琢磨し、雑用もこなす。ずっと一緒にいるから結束力もライバル意識も強くなる。
「常にライバルが隣にいて、生活も練習も同じ場所でするんですよ。そうすると“今日こそスパーリングでボコボコにしてやる”、“スクワット200回って言われたら自分だけ201回やってやる”っていう気持ちになるんです。
先輩レスラーと組んだら“絶対に私のことを認めさせてやる”と思いますしね。私の場合は、その対象がアジャコングでした。何をするにしてもベースに負けん気がある。それが日本の女子プロレスだと思います」
AEWと日本の団体を両立
志田は日本ではアイスリボン、WAVE、東京女子プロレスに定期参戦している。AEWは自由にやらせてくれるし「日本の団体が飛行機代を出してでも私にリングに上がってほしいとオファーしてくれたのも嬉しかったです」。
試合をする以上、単なる“大物ゲスト”では終わりたくなかった。「それは志田光じゃない」と。志田光は常にトップを目指して最前線で闘うもの。それが自己認識だった。
8月、同じアイスリボン出身の鈴季すずを下してWAVEのシングル王者に。自身が交渉し、AEWでの防衛戦を実現させた。挑戦者はアイスリボン創設者のさくらえみだった。
「アメリカでの防衛戦は絶対にやりたかった。日本の団体のベルトをかけてアメリカのAEWで闘う。これは私にしかできないことなので。WAVEの選手たちが喜んでくれたのも励みになりました。普通に考えたらベルトが“海外流出”したんだから悔しいはずなんですけど。それより先にベルトの“海外進出”だと喜んでくれて。
自分がベルトを獲っておいて言うのも変ですけど、チャンピオンが海外にいるって大変な事態なんですよ。団体トップのベルトがそのリングにないんですから。でもWAVEはその事態を面白くできる団体だと思ってます。だから自分もベルトを獲りにいったので」