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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「資産6兆円超」オーナー就任で金満化→W杯スペイン優勝戦士セスク加入も出遅れ…なぜか「セリエB」に懐かしの名手が集っている!
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byEmilio Andreoli/Getty Images
posted2022/10/09 17:00
コモに電撃加入したセスク・ファブレガス。かつてのW杯スペイン優勝戦士はなぜセリエBに?
しかし、夏にクラブから唐突にもたらされた急激なチーム環境の変化は、身に余る大役と精神的負担を強いるものだった。突然やってきた世界的プレーヤーに合わせてチーム戦術を組み直す仕事や彼を指導するプレッシャーが重くのしかかる一方、従来の選手たちの心情もケアする必要があった。
サッカーの世界でガットゥーゾといえば、ミランやイタリア代表で活躍し、現在バレンシアで采配を振るう闘将ジェンナーロ・ガットゥーゾの方が、知名度も実績も圧倒的に上だ。
もし、ビッグネームの彼がコモの監督だったなら、ファブレガスが部下になろうがアンリが上役になろうが「よく来たな、ガハハ」で済む話だっただろう。
セスク加入で注目度急激アップが招いた副作用
W杯やチャンピオンズリーグを制した“闘犬”ジェンナーロと湖畔の小さな町近辺で粛々と生きてきた無名のジャコモとの間には、縁戚関係も互いの面識も一切ない。
ビッグクラブや代表キャップを経験していない指導者はいくらでもいる。ただ、ジャコモには熾烈なセリエA昇格レースを戦う心の準備ができていなかった。セスク入団で突如国際級にはね上がった注目度と同姓の有名監督との比較は、想像以上の重圧となったにちがいない。
コモの無名監督の蹉跌は、世界中のあちこちで起こっている“地方クラブへの外国資本参入”という夢物語の一面を表している。
とはいえ、シーズンはまだ始まったばかりだ。コモはセリエA昇格プロジェクトの歩みを止めるわけにはいかない。
ガットゥーゾの回復と事態の好転を待ちきれなかったコモは、9月20日、新監督モレノ・ロンゴを招き入れた。
ロンゴは、2シーズン前に降格危機に陥ったトリノを途中登板から見事残留させ、18年にはフロジノーネをセリエAに昇格させた気鋭の指導者だ。46歳の働き盛りで精気あふれるロンゴは、序盤で躓いたチームを立て直すのにうってつけだろう。
降格圏からの脱出が当面の課題だろうが、今季のセリエBは早くも混戦模様だ。来年初夏のプレーオフ出場権獲得を目指して、挽回する時間はコモにも十分ある。
「ブッフォンとの対決が待ち切れないよ!」
ファブレガスは、開幕前に「セリエBでゴールを決めたい相手がいる」と明かした。
「これまでのキャリアで、僕は(GK)ブッフォンから2ゴールしている。イタリアに来たんだから、3点目を決めてみたいじゃないか。彼との対決が待ちきれないよ」
コモ同様、セリエA昇格を目指すパルマの鉄人主将ブッフォンとの対戦は10月下旬の予定だ。ただし、今季のセリエBで見られる夢対決はこれだけではない。
世界を制した名ストライカーと名DFたちが、ファブレガスを手ぐすね引いて待ち構えているのだ。
<#2に続く>
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