そんな伊勢を、いい意味で精神的に追い込んだのが、明治大学のひとつ下の後輩であり、今季リリーバーとして台頭した入江大生の存在だ。入江は、シーズン後半になると伊勢と並んで“勝ちパターン”の一員としてマウンドに立つことが多くなった。

「入江の調子が良くて、正直、若干焦りみたいなものがありました。譲りたくない気持ちもありましたし、瀬戸際じゃないけど、そういう感覚があったんで、もう一度作り直そうって。またエスコバーも調子良かったですし、周囲に背中を押してもらった感覚でしたね」

僕に危機感を持たせてくれたので助かりました

　今季からブルペンに入った入江は、学生時代からよく知る伊勢の存在が活躍する上で重要だったと語っていたが、伊勢もまた入江のことを自分を刺激してくれる頼もしい後輩だと感じていた。

「たぶん入江がいなかったら、エスコバーとヤス（山﨑康晃）さんの3人で勝ちパターンをやっていたでしょうし、そこで自分の調子が悪くても危機感は生まれなかったと思うんです。入江は今季、いろんなところで投げてくれたし、僕らの代わりになってくれることもありました。チームの戦力として必要な存在になったのは素晴らしいことだし、僕には危機感を持たせてくれたので助かりました」

　伊勢はそう言うと、ひと呼吸おいてつづけた。

「若手として、ふたりでどんどんチームを盛り上げていきたいですよね。僕はもちろん、入江もそういう気持ちは絶対に持っているはずなので」

リハビリ中の三嶋とのやりとり

　そして伊勢を語る上で忘れてはならないのが、入団以来その背中を追い信奉してきた先輩の三嶋一輝の存在だ。三嶋は8月末に国が難病に指定している『黄色靭帯骨化症』の手術を行い、現在リハビリ中である。公私ともに頼れる兄貴分である三嶋の離脱は、当然伊勢の心をざわつかせたが、一方で自分の責務を全うしようという気持ちは強くなった。

【次ページ】　去年コーチから言われた「完全に実力不足だな」