酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園優勝ドラ1左腕→新人王のち27歳戦力外→4年後ヤクルト入団も再び… 正田樹40歳は今、何を?「中途半端でやめるわけには」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2022/10/02 17:01
11月で41歳となる正田樹。かつての甲子園優勝投手は今、どうしている?
「例えば四国、香川オリーブガイナーズの打線と(読売)ジャイアンツの一軍打線を比べれば大きな違いはありますが、自分が投げている感覚としては、そんなに変わりません。ここでも力を出せなければ当然やられますし、NPBの一軍でも自分の投球ができれば抑えることができます。そういう意味では、相手がどうのではなく、自分との戦いですね。
ここまで長くやってきたのは……今更ですが“野球が好き”なんでしょう。何か目標を立ててそれに向かって努力する過程が好きなんじゃないかと思います。僕にとってはそれが野球だったんですね」
河原純一という“先輩”が正田の支えとなった
愛媛には河原純一という“先輩”がいる。巨人、西武、中日で31勝40セーブを挙げた河原は2013、14年と愛媛で投げて、円熟の投球を見せた(後に監督に就任)。河原は愛媛で結婚し家庭を持ったが、実は正田もそうだ。
「たまたまご縁があってそうなったのですが、家庭を持ってじっくり野球と向き合えています。今年、球団からコーチ就任の話をいただいたのですが、プレーヤーとしても続けたかったので、間を取って兼任になりました。
球速は最速で135km/hくらいかな。独立リーグでも速いとは言えませんが、野球はスピードガンコンテストじゃない。バッターとの間だったり、緩急で130キロ台の球でも早く見せる配球とか、コースを突いて詰まらせたり、いろんなことができる。そうしないと生きていけないですから。
コーチとしては、手取り足取り指導はしていません。投手をNPBに出せる“商品”にするのは、最終的には自分自身です。1人のコーチがその投手の野球人生全てにかかわるわけではありません。聞いてくれれば教えるけど、あとは僕の投球を見てほしいという感じです。会話の中から何かを感じてくれてもいい。キャッチボールで球を受けてアドバイスしたり、体が動くので、自分でやってみせるってことはできます」
柔和な表情で淡々と語る正田樹。夏の甲子園から23年目、四国の地で正田は“何か”をつかんだのではないか。
「契約がありますから、先のことはわからないですけど――今できることを一生懸命する、とういう考えはこれからも変わらないと思います」
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