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「親の七光り、二世、全然嫌じゃない」三浦孝太20歳、RIZIN2連勝に込めた思いと“好感度高すぎ”な父・カズとの秘話
posted2022/09/29 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao
格闘家・三浦孝太はまだ駆け出しの選手だ。公式戦の経験は2試合しかない。
ただそれでも、現時点で三浦を“最強”と呼びたい気持ちもある。彼はもしかしたら“七光りアスリート最強”なんじゃないかと。いや、これは皮肉でもなんでもない。七光りは本人も認めていることだ。
冷静に受け止めた“自分の境遇”
2002年生まれの彼は“キング・カズ”三浦知良の次男。神戸出身なのは、父が当時ヴィッセル神戸に所属していたからだ。サッカーと並行して格闘技も学び、高校を卒業するとプロファイターを目指すようになった。
それがお坊ちゃんの気まぐれやモラトリアムではない証拠に、三浦はMMAの名門BRAVEで内弟子になった。練習は一般の選手となんら変わらないものだという。とはいえ、話題性があるだけに“カズジュニア”の格闘家デビューを周りが放っておかない。ジムとRIZINの運営はデビュー前からタイミングを待っていた。三浦の実力が試合ができるレベルに達するタイミングを。
昨年大晦日、鳴り物入りの1戦目は見事な勝利。フィニッシュが倒れた相手への蹴り上げ、通称サッカーボールキックというところまで含めて100点だった。
「この舞台に自分の実力で立てているわけではない。それは分かっています」
自分の境遇についても、冷静に受け止めていた。といって、父と距離を置いているわけではない。実績がないのに注目されてしまうことに反発もしなかった。“カズの息子”であることにてらいがないと言えばいいだろうか。むしろ父に対してのリスペクトが目立った。勝利するとカズダンスのポーズを決め、リングサイドで観戦していた父に抱きつく。自分の血筋に対して、あくまでニュートラルな感覚でいるように見えた。
かかっていた相当なプレッシャー
公式戦2試合目の舞台は9月25日の『超RIZIN』さいたまスーパーアリーナ大会だった。フロイド・メイウェザーvs.朝倉未来が行われた大会だ。海外にも配信されるビッグイベント、その第1試合ということからも期待感が分かる。
大晦日から試合間隔があいたのには理由があった。5月はケガで欠場。仕切り直しで7月に試合が組まれたが、直前で新型コロナウイルスに感染してしまう。新人がキャリアに不相応な出番を用意してもらったのに、それを“流して”しまった。かと思うとデビュー戦がタイで話題となり、かつてK−1中量級でチャンピオンとなったブアカーオ・バンチャメークと現地でエキシビション。当然のようにブアカーオに弄ばれ、最後はレフェリーにストップされた。オファーを受けただけの話だが、なんとなく間が悪い感じもした。
そういうこともあって、今回は相当なプレッシャーがかかっていたようだ。勝たなければいけない。勝つだけではなく内容でも評価されなくては。そして体調にも敏感すぎるほど敏感になった。
「(プレッシャーは)ないように見せようとしてたんですけど、かなりありました。試合の1週間くらい前は本当に怖くて。冷房つけすぎて寒いと不安になったり、昨日も少しくしゃみが出ただけで心配になったり」