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「見慣れない数字だったのでガックシ来た」525日ぶりの実戦復帰、紀平梨花20歳が見せた戸惑いと覚悟「全日本を捨てるのは、ちょっと無理」
posted2022/09/26 17:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
スタート前の緊張した面持ち、演技終了後のやや硬さのある表情、得点を見たときの笑顔……試合の前後で見せる紀平梨花の表情は、今置かれている状況をまざまざと物語っていた。
9月23日から25日にかけて開催されたフィギュアスケートの中部選手権。女子は24日にショートプログラム、25日にフリーが行われた。紀平は昨年7月に右足を痛め(のちに右距骨疲労骨折と発表)、昨シーズンは1試合も出られず、実に525日ぶりの試合だった。
「とにかく通ってくれと思って」祈った。
迎えたショートプログラム、2020-2021シーズンでも使用した『The Fire Within』で臨む。
直前、緊張の面持ちを見せていた紀平の演技が始まる。冒頭はダブルアクセル。こらえるように着氷する。2つ目のジャンプはトリプルサルコウ-ダブルトウループ、最後のジャンプ、トリプルトウループを成功させる。
得点は56・69、6位につける。
翌日のフリーは、最終グループの手前、第3グループの最後の滑走。プログラムは昨シーズン用意していた『タイタニック』。最初のジャンプ、トリプルサルコウ-ダブルトウループを決めると、続くダブルアクセル-ダブルトウループも決める。ただ、その後は2つのダブルアクセルがともにシングルとなり、片方は転倒する。
この大会は全日本選手権出場権を得るための第一歩であり、13位以内に入らなければ続く西日本選手権には進めない。紀平は、グランプリシリーズのスケートカナダと西日本選手権が重なることから西日本は免除となるため、13位以内であればその時点で全日本選手権出場が決まる。それを下回れば、全日本出場は断たれる。
得点を待つ間、「とにかく通ってくれと思って」、祈った。得点が表示され、通過が確定すると、両手を広げてセーフのポーズをすると、ほっとした表情を浮かべた。