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「あのユニフォーム、今どうなった?」国内大会で着用者なし…性的画像被害を防ぐ“ユニタード”が体操界で普及していない「3つの理由」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2022/09/23 11:02
東京五輪でユニタードを使用し注目を集めたドイツ代表
ユニタードが普及していない「3つの理由」
ただ、その後、ユニタードが普及するようになった……ということはない。全日本、NHK杯、そして全日本シニアで活躍する選手たちの中に、ユニタード姿は見受けられなかった。
取材時の話などをもとにその理由を考えていくと、いくつかの要素があげられる。
1つには、レオタードを小さい頃からずっと使用していて着慣れていること。だからある意味、自然体であり、さらには試合におけるパフォーマンスの面を考えたうえで、かえにくいということがある。
機能的な意味での動きやすさという点では、どちらを着用しても大きな差はないかもしれない。ユニタードを着用することで動きにくくなる、というような開発はされていないはずだ。
ただ、単純な動きやすさばかりがポイントになってくるわけではない。例えば脚をつかむ動作なども技の種類によって含まれてくるが、そのときの感覚が異なってくる。ユニタードだと滑ってつかみにくいのではないか、そんな危惧を抱く面もあるという。
「すべての女性が、何を着るのかを自分で決めるべきだ」
また体操に限った話ではなく、採点競技では、着用するものに脚を長く見せたいという意図が込められていることが多い。
「ユニタードだと、脚の長さがそのままはっきりと出てしまうので」
そう語る選手もいた。だから、ユニタードを使用することは考えにくいという。
何よりも、誇りを抱いているということが感じられたこともある。以前の取材で、フォトグラファーが撮影に臨む際、上半身だけ撮る旨を伝えると、選手が「え?」という表情をしたことを記憶している。全身をいかして、あるいは器具を利用して選手が自ら示すさまざまなポーズの中にあったのは、誇りにほかならなかった。
東京五輪でユニタードを着用したドイツ代表の1人、エリザベート・ザイツはこのように語っている。
「何を快適と感じるかの問題です。すべての女性が、何を着るのかを自分で決めるべきだということを表したいと思っていました」
選択肢の提示と、選手に決める権利があることを示す意図があったことを伝えている。