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「ジャッジが(大谷翔平を)一歩リード」NHK解説者・小早川毅彦が語るMVP争い“逆転の条件”…ジャッジが“打ちまくる理由”も分析
text by
小早川毅彦Takehiko Kobayakawa
photograph byNanae Suzuki
posted2022/09/18 06:01
熾烈を極める大谷翔平VSアーロン・ジャッジのMVP争い。NHK解説者・小早川毅彦氏にMVPの展望や、両スラッガーの共通点、違いを聞いた
MVP争い。現時点ではジャッジが優位も…
シーズン終盤となり、二人の所属チームは対照的な状況になっています。ヤンキースは現在、アメリカンリーグ東地区の首位で優勝争いの真っただ中。故障者続出という厳しいチーム状況のなかでも、ジャッジは孤軍奮闘しています。相手投手のマークも日ごと厳しくなるなか、これだけの数字を残しているのは本当に素晴らしいこと。ドーピング問題など疑惑の声が上がらないという点で「真の年間最多記録」とも言われるヤンキースのレジェンド、ロジャー・マリスのホームラン61本という記録も、おそらく超えていけるでしょう。
一方のエンゼルスは地区優勝の可能性が完全消滅し、球団売却の検討も発表された。選手にとってモチベーションを保つのは難しい状況ですが、大谷翔平には心配無用でしょう。彼は本当に野球が大好きですからね。ピッチャーであればマウンドでいつまでも投げていたいし、バッターとしては試合に出続けたい。野球選手の原点でもある「野球が好き」という純粋な気持ちが彼を動かしているのだと思います。
大谷とジャッジのどちらがMVPにふさわしいか――。アメリカではそんな議論が白熱しています。私は今の時点ではジャッジの方が一歩リードしているかな、と思います。ただし、大谷が投手として規定投球回数をクリアできればその瞬間、一気に形勢は逆転する。長いメジャーリーグの歴史のなかで、過去に60本打っている選手はいますが、規定投球回数と規定打席に達した選手は誰もいないんですから(編注:1901年の2リーグ制発足以降)。
これをクリアした時が、私はある意味で大谷翔平の「二刀流の完成」だと思うんです。ましてや世界最高峰の舞台での結実、これは凄いことですよ。15日時点であと21イニング。故障さえなければほぼ達成可能でしょう。そうなったらもう、ジャッジがたとえ80本ホームランを打ったとしても敵わない。ただ100本打ったとしたら……MVP争いはまた分からなくなりますね(笑)。
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