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「今思えば、俺の誇り」18歳の三浦大輔がプロ初登板、“大洋ホエールズ消滅の日”に誓った想い「俺も遠藤一彦さんのように…」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph bySPORTS NIPPON
posted2022/10/07 06:22
三浦大輔にとってのプロ初登板が「ホエールズ」最後の日だった。特別な一日のマウンドに上がった三浦に去来した思いとは…?
いつもならゲームの流れが気になるのに…
弱い時代を懸命に支えた遠藤は、最終登板を終えベンチに戻ると、これまでにない感覚にとらわれた。
「いつもならゲームの流れが気になるのに、ベンチに座るとファンみたいな感覚になったんですよ。がんばれよ、と」
ホエールズを背負ってきた重荷をようやく下すことができたのだろうか。これまでとは異なる風景の中、「面白い子だな」と、遠藤の目に止まったのが、同日、初登板を果たした高卒ルーキーの三浦大輔だった。
遠藤と三浦――20歳近く年の離れた二人に接点はなかった。遠藤は6月後半までファームにいたが、一日でも早く一軍に戻りたいがため、ルーキーを気にしている場合ではない。三浦もまた大先輩に自分から声をかけるような立場になかった。
遠藤さんの言葉はまったく覚えてない
三浦は7回から2イニングを投げた。7回を投げ終えベンチに戻って来たとき、遠藤は「がんばれよ」と三浦に初めて声をかけたが返事はなかったという。当の三浦も「遠藤さんの言葉はまったく覚えてないし、それどころじゃなかった」と語っている。
この登板は、三浦にとって、のっぴきならない状況で臨んだものだった。
「8月末から一軍に帯同したんですけど、1カ月以上出番がないまま最終戦を迎えてしまったんです。ホエールズ最後の試合だし、遠藤さんの引退試合。さすがに今シーズンの登板はないんだろうと思っていたら『三浦、行くぞ!』と声が掛かったんです。その瞬間、血流が頭に上がっていくのがわかりました。やっと出番がきたんだって」
鎖を引きちぎるかのごとく三浦はブルペンから、3万人の大観衆が取り囲むカクテル光線の中へ勢いよく飛び出していった。