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松山英樹に400億円オファー!? 破格のオイルマネーが話題のリブゴルフが“マツヤマ”に熱心なワケ〈PGAツアー残留、節目の10年目へ〉
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2022/09/07 17:00
9年連続でツアー最終戦進出という偉業を達成した松山英樹。周囲が騒がしい中、9月15日(現地時間)から始まる新シーズンに向けて調整を続ける
問題は新団体が今年6月の開幕戦を皮切りに、一連の試合をLIVインビテーショナルシリーズとして、英国、米国、タイ、サウジアラビアで計8試合を開催。既存のプロツアーの日程とバッティングするスケジュールを組んだことで、選手の奪い合いが始まった(そもそもツアーが開催されない週のほうが少ないのだが)。
書くのを忘れていたわけではない。目下、LIVゴルフの最大の特長はここまでに羅列した試合形式云々よりも、“カネ”にある。プロサッカーをはじめとした他スポーツ同様、オイルマネーの存在感はゴルフにおいても際立った。
男子4大メジャー大会の優勝賞金が、円安を抜きにして2億円を超えるようになったのはここ最近のこと。LIVゴルフインビテーショナルシリーズの優勝賞金は、個人戦1試合で400万ドル(約5億6000万円)。団体戦は1人当たり75万ドル(約1億円)に上る。それも3日間の試合で、だ。予選落ちするとゼロ円のツアー競技に対し、こちらはビリ(48位)でも3日間まわり切れば、12万ドル(約1680万円)を手にできる。さらに参加を表明している選手の飛行機代や期間中の宿泊代までを新団体が負担してくれるというのだから、おいしい、おいしすぎる!
トップ選手には破格の“移籍金”を用意
LIVゴルフは選手集めに躍起になった。最初のうちは多くの人が訝しげに見ていたが、春先のフィル・ミケルソンの参加表明をきっかけに潮目が変わった。元世界ランク1位のダスティン・ジョンソンらトッププロ、ベテランを中心に数人が所属先のPGAツアーに見切りをつけて移籍した。数カ月前にそれぞれがツアーへの忠誠を誓う声明を出していたにも関わらず……。「気が変わった」のひと言で、万事問題ない世界である。
プロゴルフ界の常識をこれまた覆したのが、新リーグが彼らトップ選手に“移籍金”を投じたことだ。一流選手のそれは軽く100億円を超えるというからまさに破格。ジョンソンがPGAツアー在籍時に15年半かけて稼いだ額は7400万ドル=約100億円だったのだから。
トッププレーヤーを引き抜かれた欧米ツアーの拒否反応は相当なものだった。サウジ政府の政治的、人道的問題の疑惑を持ち出し、一連の動きをスポーツウォッシングと批判した。LIV移籍選手には出場資格の停止を通達。それでも選手の流出は超一流プロから“そこそこのプロ”も含めて止まらず、9月には全英オープンを制したばかりの世界ランク2位、キャメロン・スミスをはじめ6人が移籍した。