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松山英樹に400億円オファー!? 破格のオイルマネーが話題のリブゴルフが“マツヤマ”に熱心なワケ〈PGAツアー残留、節目の10年目へ〉
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2022/09/07 17:00
9年連続でツアー最終戦進出という偉業を達成した松山英樹。周囲が騒がしい中、9月15日(現地時間)から始まる新シーズンに向けて調整を続ける
関係者の話では、LIVサイドには当初、ツアー側と協力体制が敷けるという思惑もあったようである。トップ選手がツアーとLIVを自由に往来し共存する――ところが強烈な反発を受け、LIV側はプロゴルファーの個人事業主という特性を主張してツアー側の出場停止処分を非難し、独占禁止法違反を訴えて法廷闘争に持ち込んだ。なにせ、カネはある。
現状、裁判の行方がはっきりするのは、米国では再来年以降となる見込みで、それまではどうも分裂状態が続きそう。PGAツアーは賞金アップなど対抗策を掲げ、残った選手たちの結束をアピールした。今後、LIV側がさらに賞金や移籍金を釣り上げ、選手に厚遇を施してもなんら不思議ではない。それが経済の基本的な競争原理であり、なにせカネはあるのだ。
騒動のあいだ、議論と言うにはおこがましい、程度の低い舌戦もSNS上で繰り広げられている。参加選手やリーダー本人による皮肉や批判の応酬もある。いったい誰だ、ゴルフが紳士のスポーツだなんて言ったのは……。
個人的には、この互いにリスペクトを欠いた分断は、結果的に男子プロゴルフの危機に直結すると感じている。関係者やコアなファンには格好の話題だが、世間の大多数にとってはニッチな話。スポーツのように競争で成り立つ興行にとって、その世界の「いちばん」が分かりにくい状態は好ましくない。ツアーと新リーグの分断は、男子プロゴルフと世間との分断にも発展しかねない。
アジアを代表する松山英樹は“輝く石”
さて、そんなこんなで男子プロゴルフ界が大きく揺れる中、日本の松山英樹は渦中の最重要人物のひとりといって間違いなかった。2022年の半ばは、彼が持つ影響力の大きさを認識させられる夏になった。
LIV側は昨年、まだ新団体の概要がつまびらかになる前から、松山に巨額の契約金と好条件をもとにしたオファーを出していた。アジア人初のマスターズチャンピオンという称号はかつてワールドツアーを標榜したノーマンにとって格好のターゲット。日本、アジアのゴルフマーケットは彼らにとっては依然として未開拓地の油田、じゃない、輝く石に見える。
それゆえ松山へのオファー、契約金は1000億円(を蹴った)とされるタイガー・ウッズに次ぐクラスとのいうのが巷の噂だ。300億円、400億円……いや、「言い値でイイ」と申し出たという話すら聞こえてくる。
6月の全米オープン、7月の全英オープンの頃、彼の周囲は最高潮に騒がしかった。海外の一部メディアが「マツヤマはLIVと契約」と報じ、動向が一気に注目された。
結論から言うと、これは誤報だった。