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「間違いなく伸びます」スターダム異例づくしの新人・天咲光由(20歳)の“魅力”は何なのか? 中野たむも意表を突かれた“まさかの発言”とは 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2022/09/03 11:03

「間違いなく伸びます」スターダム異例づくしの新人・天咲光由(20歳)の“魅力”は何なのか? 中野たむも意表を突かれた“まさかの発言”とは<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

「超新星5番勝負」第2戦で中野たむと対戦した天咲光由。試合後には泣いたり笑ったりと表情が何度も変化した

 天咲は『NEW BLOOD』を自分のための大会だと言い切り、実際に出場3大会すべてでメインを務めてきた。5番勝負に関しても「強くなる姿を見せていく場。一番頑張らないといけない」と語っている。だがたむ戦は“恐怖との闘い”を強いられた。

 タイガースープレックスで勝利すると、たむは涙が止まらない天咲にエールを送った。

「苦しいこと、辛いこと、悔しいこと、嫌なこと、たくさん経験して、死ぬほど泣いて、生きろ。プロレスは人生なんだ」

 天咲はといえば感情がまとまらない。試合後は泣いたかと思ったらたむにハグされてホッとしたような笑顔を見せ、しかしインタビュースペースではまた泣いた。たむの言葉に「ゆっくり、着実に強くなります」と返して大先輩を驚かせてもいる。「いや、早くして」とたむは苦笑い。気持ちに言葉が、レスラーとしての“表現”がついてこない。それもまた天咲の現状と言っていい。

たむが感じた「天咲の葛藤と伸びしろ」

 5番勝負第1戦で闘ったジュリアは、天咲には不思議な図太さがあると言っていた。たむはこう語る。

「(天咲は)肝が据わってますね。その分、何を考えてるのか分からないところがあると思ってました。本当に勝ちたいのか、強くなりたいのか、心の奥底が見えにくい選手だなって。ただ今日闘って、人気や注目に自分の実力が追いついてないことへの憤りや苦しみとか、強くなりたいと心から思ってるんだなというのが凄く伝わってきました。

 試合中から泣いてましたもんね。本人の中に葛藤があるんだと思います。でも、それは自分に打ち勝とうという気持ちがあるから。そういう選手は間違いなく伸びます」

 また、たむは天咲に「デビュー間もないのに人気があってメチャクチャ注目されて、それって最大の武器だよ」とも語っている。ここがたむ、あるいはスターダムの面白いところだろう。戦前からどれだけ厳しい言葉をぶつけても「実力もない新人が写真集なんか出してる場合か」とは言わないのだ。

「(人気や注目は)プロレスラーにとって最大の武器じゃないですか。尻込みせずに活かしまくってほしいです。それで潰れたらそこまで。プロレスって、あらゆるものが武器になるんです。長所だけじゃなく短所も。全部を武器にして、スターダムの未来になってほしい」

葛藤すら天咲の魅力になる

 2戦連続の完敗。試合中から涙があふれてしまうほどの恐怖と悔しさ。『NEW BLOOD 4』のセミファイナルでは、羽南がフューチャー王座V10を達成。次回のメインは自分が務めたいとアピールしている。天咲の葛藤はこれからも続くだろう。

 たむの言葉を借りるなら、その“葛藤”さえも武器、つまりファンに提供できる物語になるのがプロレスだ。ファンはトップ選手たちの完成された闘いばかりを求めているわけではない。そうであるなら、そもそも“若手主体興行”という企画が成り立たない。

 プロレスは他のスポーツやエンターテイメントと比べても、ファンが“過程”を大事にしてくれるジャンルだ。2022年8月の悔しさは、いつか「そんなこともあった」と振り返るためにある。葛藤がある限り、つまり人気と注目度を超える実力を求める限り、天咲の魅力は薄れないだろう。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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