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大坂なおみに敗れグランドスラム2度のV逸…史上最多優勝に「1」届かず“引退”表明の40歳・女王セリーナが4年前に言い放った「わたしは犠牲になるかもしれない」
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byHiromasa Mano
posted2022/08/31 17:00
今月、競技から事実上の引退を表明したセリーナ。全米の観客は女王の迫りくる終止符に熱視線を送っている
プレーヤーとしての根幹を揺るがせた大坂戦
大坂に準決勝で敗れた2021年全豪オープンの後、セリーナのグランドスラムでの戦績は、全仏オープン4回戦敗退、ウィンブルドンは初戦の途中で負傷棄権。その後の3大会は欠場し、今年6月末のウィンブルドンも初戦敗退を喫した。年齢を考えれば、時間の流れが逆風となるのは、自然の摂理だ。ただ、いささかの感傷が許されるなら、あの2021年メルボルンでの大坂戦での敗戦が、セリーナのテニスプレーヤーとしての根幹を揺るがしたように思えてならない。
「引退」の言葉を嫌う彼女が、「evolve(=発展的前進)」という独特の言い回しでコートを去ることを表明したのは、8月上旬のことである。
セリーナが最後の舞台に選んだのは、8月29日に開幕した全米オープン。過去6度頂点に立ち、たとえ敗れても女王として振舞い続けた、まぎれもない彼女の城だ。
女王の登場に割れんばかりの歓声
その初戦――世界最大のテニス専用アリーナ“アーサーアッシュスタジアム”に現れたセリーナは、きらびやかなドレスをまとい、全身から女王の威厳を発していた。
煽情的なアナウンスと、巨大スクリーンに映し出される彼女の功績を称えるビデオが、彼女こそが女王であることを顕示する。
2万人を超える大観衆の割れんばかりの歓声を背に、彼女は1回戦の勝利をつかみ取った。まだ、この城を明け渡す気はないと言わんばかりに。
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