テニスPRESSBACK NUMBER
大坂なおみに敗れグランドスラム2度のV逸…史上最多優勝に「1」届かず“引退”表明の40歳・女王セリーナが4年前に言い放った「わたしは犠牲になるかもしれない」
posted2022/08/31 17:00
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph by
Hiromasa Mano
女子テニス界のみならず、スポーツ界に革命をもたらしたセリーナ・ウィリアムズが、コートを去る日が近づきつつある。
23回のグランドスラム優勝を成し遂げ、35歳での出産を経てなおコートに戻ったセリーナは何を求め、ラケットを握り続けたのか。思い出されるのは、グランドスラムでの大坂なおみとの2つの対戦だった――。
23回のグランドスラム優勝を成し遂げ、35歳での出産を経てなおコートに戻ったセリーナは何を求め、ラケットを握り続けたのか。思い出されるのは、グランドスラムでの大坂なおみとの2つの対戦だった――。
センターコートの大型スクリーンに映し出されるセリーナ・ウィリアムズの顔に、困惑と怯えの影が落ちていた――。
時間の経過とともに、勝利の光が確実に薄れていく恐怖。ネットを挟み、あれほどまでに純粋な憧れの目を向けてくる16歳年少の選手が、無垢な瞳のままで、自分を激しく追い詰めてくる矛盾。
その残酷な現実に直面した時、39歳の彼女は、自身のキャリアの終焉を悟っただろうか?
24回目のグランドスラムに臨んだ女王の貫禄
2021年2月、全豪オープン準決勝。39歳を迎えるも、23のグランドスラムタイトルを胸に抱く“生きるレジェンド”の、当時のランキングは11位だった。
マーガレット・コートが持つ24の史上最多グランドスラム優勝回数に肉薄した彼女は、宿願を成就すべく、この全豪オープンにぴたりと照準を合わせていた。
初戦から3回戦までをストレートで勝ち抜けると、4回戦では、第7シードのアリーナ・サバレンカを死闘の末に退ける。圧巻は、準々決勝のシモナ・ハレプ戦。当時の世界2位との壮絶な打ち合いを、セリーナは6-3、6-3のスコアで制した。
試合中に放つ闘志とオーラ。試合前後に大歓声に悠然と応じる立ち居振る舞い。ランキングも年齢も関係ない。彼女は誰もが認める女王であり、センターコートは、彼女の城だった。
準決勝で、大坂なおみと対戦するまでは……。