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「白いベルトが泣いてるよ」KAIRI不在のリングで上谷沙弥は批判にどう答えた? ひめかとのV9戦で示した“現在のスターダム”の価値
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/08/26 17:01
8月21日のスターダム名古屋大会でひめかを破り、9度目の白いベルト防衛に成功した上谷沙弥(左)。試合後には爽やかに健闘を称え合った
KAIRIの欠場を受けてひめかを逆指名した上谷は自ら“点”を作り、相手と心から向き合い、過去を超えるという形ではなく同世代との戦いで“現在のスターダム”の価値を示し、明るい未来を感じさせた。
また、もともとの試合でわかりやすい焦点として存在していた現王者vs.旧王者という構図によるものではなく、団体全体の発展を狙ってフックアップする側として振る舞ったこと、相手の力を引き出してギリギリまで追い詰められても、全て受けきって勝ってみせたことで、絶対王者の風格を纏うまでになった。
白いベルトを泣かせる王者はもういない
KAIRIを直接超えることでしか得られない、と思われたものを、KAIRIとの対戦が流れてしまったことで自ら掴んだ上谷。
とはいえ、これでKAIRIとの対戦の機会が永遠に失われたわけではない。
今回行われる予定だった試合では現在と過去という部分が強調されたが、プロレスラーは誰もが常に現在進行形だ。白いベルトを泣かせる王者はもういない。「これからも、このベルトを精一杯笑顔にさせていきたいです!」と言えるようになった上谷は、海賊女王の航海先としてより魅力的になっただろう。
一寸先はハプニング。プロレスは何があるかわからない。しかし、そこで偶然生まれた点が次の点と繋がって新しい線になってゆく。だからプロレスは楽しいのだ。
「誰が何と言おうと、私がスターダムだ!」
白いベルトを手に叫ぶミス・ワンダーのその言葉は、いつもより逞しかった。
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