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近江・山田陽翔は「心から応援したくなる子」対戦した監督もホレる“律儀な剛腕”の素顔とは?「プロに行っても可愛がられるでしょう」 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/08/26 06:01

近江・山田陽翔は「心から応援したくなる子」対戦した監督もホレる“律儀な剛腕”の素顔とは?「プロに行っても可愛がられるでしょう」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

準々決勝を終えた後、高松商・浅野翔吾(手前)と言葉をかわす近江・山田陽翔

 2022年の高校野球を彩った背番号1。試合後のインタビューでは涙をぬぐい、初めて表情を崩したが、甲子園が終わって数日後の取材では山田は甲子園について笑顔でこう話してくれた。

「負けたのは悔しいですが、本当に楽しかったです」

 帰郷し、戦闘モードから解放されたその表情は、すっかり柔らかくなっていた。同級生との宿舎での思い出、甲子園でのあれこれ。時には冗談も交えながら振り返る姿は、世間一般にどこにでもいる高校生のまさにそれだった。

 人懐っこい性格と、仲間たちに見せる素顔。取材が終わっても「この夏は、ありがとうございました」と丁寧に御礼を述べてくれた。そういった律義さも、山田を形成する大きな要素だ。日本一にこだわって県外の強豪校ではなく地元・滋賀で甲子園を目指し、始発電車に揺られて毎朝室内練習場で黙々とバットを振った。時には「練習しすぎ」と周囲から言われることもあった。

 それでも、突き進んだ。どうしても日本一になりたかったから。

歴代3位の115奪三振

 コロナ禍という難しい状況の中で、3度の甲子園出場。歴代5位タイの11勝、歴代3位の115奪三振。驚異的な数字も刻み、本人が“楽しかった”という言葉で結んでいるのだから、これ以上周りは何も言う必要はない。

 山田陽翔の高校野球は終わった。でも、野球人生はまだまだこれからだ。

 さらに光の差す方へ向け、新たな鎧をまとう準備をする。

「自分はまだ、こんなものじゃない」

 もっともっと輝ける。そう信じて、再び走り出す。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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