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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「ディズニーランドへ行きたい娘のためにも仕事もしなきゃ(笑)」荒木絵里香が“大学院の課題”に追われながらバレーボール界のために動く理由
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/08/23 11:02
バレーボールから離れて、新たな発見もあったと引退からの1年を振り返った荒木絵里香
現役時代、日本代表期間だけでなくVリーグでの活動期間は所属チームがある滋賀や愛知にいた。休日、街へ出れば、声をかけられる機会もあったが、決まってこう言われた。
「荒木さん、どうしてこんなところにいるんですか?」
日本代表の荒木絵里香、バレーボール選手の荒木絵里香は知られていても、東レの、トヨタ車体の荒木は知らない。それが多くのバレーボール選手が直面する課題だ。
「選手自身が発信していくことも必要だけれど、組織としても変わらないといけないし、私もそこでできることがあって、今までやってきたことが活かせるなら活かしたい。何とかしたいし、しなきゃいけないですよね」
とはいえ現実を見れば、今は大学院での課題に追われる日々。目の前の課題、締め切り、研究の準備、とやることは尽きず「毎回、毎日うなだれる」と笑うが、JOCアスリート委員にも選出され、バレーボールのカテゴリーだけに留まらない活躍も期待されている。
「挑戦、失敗、反省、成長。バレーボール選手時代と同じです。大学院に入って、修士論文を出したら終わりではないし、大事なのはそこから。引退して、次のオリンピックまでにどんなことができるかも積極的に取り組んでいきたいけれど、娘の育児ができるのももう何年もない。今はまだママ、ママって言ってくれるけど、いつまでそうかわからないじゃないですか。ライフプランニングとか、考えなければならないこともたくさんあるけど、ディズニーランドへ行きたくて仕方がない娘のためにしっかり仕事もしなきゃ(笑)」
高校生で気になるのは「自分に似た選手」
猛暑の夏、先月は徳島で開催された女子バレーのインターハイ会場にも足を運んだ。選手や指導者、さまざまな姿に「このままだとケガをしそうだから身体をつくったほうがいいだろうな」「この監督はどんな指導をしているのだろう」と思いを巡らせる。
トヨタ車体クインシーズのチームコーディネーターとしては、Vリーグで活躍が期待される選手を見つけることも仕事の1つではあるのだが、気になるのはやはり、かつての自分を彷彿とさせるような選手ばかり。
「私はとにかく大きくて、でもヘタだったから、そういう子を見ちゃいますね。自分の身体がまだ使いきれてない選手とか、“頑張れー!”って、普通に応援していました(笑)」
自身の未来。バレーボール界、スポーツ界の未来。今がどこへつながるかはわからない。確かなことは1つだけ。
「選手としてもやりきることができて、終えた今も好きなことができている。私、幸せですね」
引退から1年が過ぎた2022年、多くの課題に追われながら過ごす、束の間の夏休み。それもまた、新鮮だ。来年、再来年はどんな日々を過ごしているのか。「これからどうなるかわからない」と言いながらも、さまざまな方向へ広がる可能性を楽しむ。そんな荒木の姿は、まぎれもなくこれからの“希望”だ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。