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羽生結弦が公開練習3回目の『SEIMEI』で示した“これからも挑戦していく姿勢”「平昌五輪のときから成長しているってところを見せたかった」
posted2022/08/13 11:03
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
それは今日まで積み重ねてきた鍛錬の成果と、ここからのスタートを共有するような時間だった。
伝わってくる体幹の強さ
8月10日、羽生結弦が公開練習を実施した。場所はアイスリンク仙台。4歳のとき初めてスケートを習い、スケーターとしての土台を培ったリンクだ。
「自分のアスリートらしさというか、根本的にある、さらに追求し続ける姿みたいなものを見ていただく機会になればいいなと思って、練習を公開するというイベントを作ってみました」(羽生)
その言葉そのままの光景が繰り広げられた。
11時37分頃、リンクサイドに姿を現す。無数のカメラの前で椅子に腰かけた羽生はトランクを広げ、練習の準備を始める。
11時50分過ぎ、ウォームアップを始める。場所を変えながら行なった一連の動作で目を引いたのは、肩甲骨、背中、そして腰のストレッチの動作だ。例えば肩甲骨を自在に素早く動かすさまに、圧倒的な可動域の広さや柔軟性が明瞭に表れていた。しかも頭の位置がぶれがないことから体幹の強さが伝わってくる。さらに両手を激しく右前方から左後方にスイングし、身体をひねる動作を続けて行う。
誰も成功させたことがない高難度の組み合わせ
それらは一朝一夕にできるものではむろん、ない。長年、地道なトレーニングを積み重ねてきたことがそこに明らかだったし、氷上では華やかなプログラムの世界に目が向いて見過ごしがちな、築いてきた身体の能力がまざまざと浮き彫りになっていた。
12時31分、リンクに入り、練習がスタートする。