「ルースボールがアウトオブバウンズになりそうだとします。中村では、ボールを取りに行く選手に対して、2人目が声を出してコールする。1人目はボールを確保したら、その声のする方向にパスを出す練習を延々とやりました。もしも、声が聞こえなかったら、どうすると思います？　相手ボールになっても構わないから、そのまま外に出てしまいます。なぜなら、適当な方向にボールを投げて、それが相手に渡ってしまったら、簡単にファストブレイクを許してしまいますから。それよりも、相手がボールを入れるタイミングで、スティールを狙えるほうがいい」

　部活動は規則が厳しくもあった。中学時代は携帯電話を持っていた安間だが、入学に当たっては解約してから福岡に向かった。コンビニも禁止で、美容室に行くのにもうまく時間を捻出しなければならず、しかもみんなが同じ美容室に行くので、ヘアスタイルが自然と似通っていた。

中村学園女子（福岡）時代の安間。写真は2010年のウインターカップ。決勝で札幌山の手に敗れ、準優勝だった　©AFLO

「携帯、コンビニがダメだって聞くと、厳しい生活だと思ってしまいますよね。でも、私にとっては充実した時間でした。練習が終われば、毎日練習ノートを書き、携帯が禁止なので連絡を取る手段も限られ、それで私は手紙を書くようになり、その習慣は今でも残っています。もちろん、LINEもいいですけど、手紙って素敵ですよね」

「自分に100%を求めすぎてるんじゃない？」

　中村学園女子を卒業後は、中村では3学年上の憧れの先輩である瀬崎理奈がいた拓殖大学へと進学。私が安間のプレーを見たのは、ちょうどその時期になる。

　拓大でもレギュラーを獲得すると、自分の力に手ごたえを感じるようになり、2年生の頃からはWリーグでプレーしたいと考えるようになった。憧れていたのはトヨタ自動車だった。なぜなら、沖縄出身で、拓大の先輩でもある久手堅笑美がプレーしていたからで、実際にその夢が叶った。

©Yuki Suenaga

「私が4年生の時から、大学生でありながら1月からWリーグでプレーできる『アーリーエントリー』の制度が始まったんです。チームに合流したのはいいんですが、周りは日本代表の選手がずらりといて、しかも皇后杯からWリーグのプレーオフに向かう時期ですから、とにかく邪魔だけはしちゃいけないと思って……。ありがたいことに、自分がプレーする時のフォーメーションも決めてもらい、たくさん勉強させてもらいました。学ぶことの多い3カ月で、アーリーエントリーを迷っている大学生がいたら、迷わずに行った方がいいよとアドバイスしますね」

　そして2017年にトヨタ自動車入社。しかし、PGのポジション争いは激しかった。

「トヨタにはPGがたくさんいました。ずっと日本代表でプレーしてきた大神（雄子）さん、東京オリンピックでもメダルを獲得した三好（南穂）さんもいましたから、自分としては持ち味であるディフェンスから相手にプレッシャーをかけることを意識していました。でも、どうしても自分と周りを比較しちゃってたんですよね。だからひとつのミスを引きずってしまうことが多くて……」

　自分の持ち味を理解していながらも、存分に力を発揮できないまま過ごしていた安間を変えてくれる人物がトヨタにはいた。アシスタントコーチのジェームス・ダンカン（JD）と、通訳の綾部舞のふたりだ。

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