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100m日本記録保持者・福島千里が初の800mに参戦!「見せ場をつくらないと…」「今回の緊張は予想を超えていた(笑)」《もう一つの世界陸上》 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byAyako Oikawa

posted2022/07/25 06:00

100m日本記録保持者・福島千里が初の800mに参戦!「見せ場をつくらないと…」「今回の緊張は予想を超えていた(笑)」《もう一つの世界陸上》<Number Web> photograph by Ayako Oikawa

世界陸上のメディアレースに出場した100m、200m日本記録保持者の福島千里さん(左)とTVレポーターのデヴィンさん(右)

 大会本番と同じように、一人一人選手名と国名がスタジアムでアナウンスされるが、福島さんは先程まで緊張していたのが嘘のように、名前を呼ばれると大きな笑顔で手を振る。

 さすが日本記録保持者、さすがオリンピアンだ。

 オンオフのスイッチの切り替えがうまい。

 女子の部もスタートから爆走する選手がいる中、福島さんも自分のペースで楽しそうに笑顔で走る。

 最後の100mは「見せ場を作らないといけないかなと思って」華麗なスプリントを見せ、両手を大きく広げて笑顔でフィニッシュした。

「今回の緊張は予想を超えていた(笑)」

 レース後のコメントはメディアとは異なり、とても深かった。

「ダイヤモンドリーグも行われるヘイワードフィールドで、選手たちと同じトラックを駆け抜けたことは一生の思い出です。ゼッケンをつけて走るとは思わなかったです。ゼッケンをいただけて感動しています。これ、選手と同じゼッケンですよね。これをもらうために現役の最後の方、どれだけ苦労したかと思うと。(今回は)簡単にもらってしまいましたが、私にとってもこの1枚は重いゼッケンです」

 ゼッケンを見つめながら、福島さんはしみじみとそう話してくれた。

 現役時代、このゼッケンを胸につけて走るために標準記録を追いかけた。出場権、代表権を手に入れ、ゼッケンを受け取り、日本代表のユニフォームにつけた時の気持ちは格別だっただろう。

 スタジアムで走れる意味、そして重さを実感するのは、トップで走り続けた彼女ならではのコメントだ。

「みんなとても楽しそうでしたね。私は現役時代、眉間にシワを寄せながら走っていましたよね。それはそれでいい思い出で誇り。今回の緊張は予想を超えていた(笑)。こんなに順位が悪くても楽しかったと思うのは初めてかも。この自己ベストを更新するのを生涯の目標にしていこうかな」

 デヴィンさん、福島さんともにレース後すぐに「来年のブダペストも頑張ります」と目標を教えてくれ、東京世界陸上でも再参戦することを約束した。

 仕事をしながら練習するのは容易なことではない。だが少しでも向上したい、選手の気持ちに寄り添いたい、そんな気持ちがあれば、前向きに練習に向き合えると思う。

 来年の世界陸上はブダペスト、そして2025年の東京の世界陸上の2人のレースを楽しみにしたい。

 
 

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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