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中学1年生の女子プロレスラー誕生「リングでは“この野郎!”って気持ちが出ます」 新人・美蘭の闘いを同級生も応援中《特別グラビア》
posted2022/07/24 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takuya Sugiyama
美蘭(みらん)が生まれて初めてプロレスを見たのは小学5年生のときだった。といってもそれは2020年、一昨年の秋なのだが。
彼女は2009年6月11日生まれの13歳。中学1年生のプロレスラーである。今年4月29日にデビューした際には、まだ12歳だった。
プロレス好きな身内に、地元の板橋区で開催されたワールド女子プロレス・ディアナの大会に連れていってもらったのがプロレスの原体験だった。
「最初はルールも知らなかったんですけど、選手のみなさんが凄く輝いてました」
とりわけ心に残ったのは、やられてもやられても立ち上がる姿。新世代の有望株である梅咲遥のファンになり、川崎の道場マッチなどディアナの大会に足を運ぶようになった。売店でグッズを買って、団体創設者で社長の井上京子にサインをもらい、顔を覚えてもらったりもした。
きっかけは井上京子直々のスカウトだった
すぐに「私もプロレスをやってみたい」と思うようになった。ディアナ入門は昨年の5月。つまり小学6年生のときだ。きっかけはなんと「スカウト」だった。
「去年の4月、ディアナの10周年記念大会を見に行って自分の席に座っていたら、京子さんがディアナのジャージをもってきてくれたんです」
熱心な女子小学生のファンがいることは団体側も知っていたし、どうやら運動神経がいいらしいということも伝わっていた。ディアナには中学生でデビューした、ななみという前例もある。「始めるなら早いほうがいい」ということで、社長直々のスカウトとなった。もちろん本人は嬉しくて仕方なかったそうだ。
「自分でも、早くプロレスがしたかったので」
デビューは“聖地”後楽園ホール
ディアナといえば井上京子だけでなくジャガー横田も所属。女子プロレスの保守本流・全女(全日本女子プロレス)の流れをくむ団体だ。同時に現代的で柔軟な姿勢もあり、小学生をスカウトするだけでなく今年はHimikoが49歳でデビューしている。全盛期の全女を思春期に見た世代だ。
小学生の練習生・美蘭にも無茶なことはさせなかったが、基本は厳しく叩き込んだ。特に大事なのは、試合でケガをしないための体作りと受身だ。
「プロテストのメニューに、3分間連続のロープワークと受身があって、それが凄く大変でした」