濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
中学1年生の女子プロレスラー誕生「リングでは“この野郎!”って気持ちが出ます」 新人・美蘭の闘いを同級生も応援中《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/24 11:01
今年4月にデビューした美蘭。中学1年生の13歳だが、すでに初勝利もあげている
板橋区から川崎の道場に片道1時間かけて練習に行き、プロレスに役立てようと体操教室にも。カポエラも習うようになった。体が小さいからタックルで相手を倒すのも一苦労。だからスピードを活かし、アクロバティックな動きを心がけているという。
練習のレベルはどんどん上がっていったが、やめようとか「私にプロレスは無理だ」と思ったことは一度もない。プロテストに合格したのは昨年10月。体を壊した時期があり、またコロナ禍もあって団体としてもデビューを急ぎはしなかった。初リングは今年4月29日。“聖地”後楽園ホールで、京子の胸を借りた。中学生レスラーとして注目されたが、本人としては小学生のうちにデビューしたいという気持ちもあったらしい。
同級生の間でも話題に「技かけてみてよ」
2戦目は地元・板橋で。初めてプロレスを見た会場に、選手として帰ってきた。親戚や同級生、カポエラの仲間も見にきてくれた。しかし同級生も驚いただろう。中学に入ってすぐ、クラスメイトがプロレスラーになっていたのだ。
美蘭自身はプロレスについて、積極的に周りに言ったわけではなかった。
「でもネットとかに出るので、やっぱり気づく人はいました。それで広まって」
最初はどうしても珍しげな目で見られる。男子から「技かけてみてよ」と笑われて無視したこともある。それでも試合を見たら、みんな応援してくれるようになった。女子の友だちから「凄くカッコいいよ、自信もって」と言われたのがとても嬉しかった。
デビュー戦は「メチャクチャ痛かった」
嬉しかったといえばデビュー戦だ。井上京子と対戦した感想を聞くと、美蘭は言った。
「最後にやられたラリアットがメチャクチャ痛かったです。でもファンの頃に見ていた人と闘えて、見ていたときに思っていたのと同じで凄く強かった。それが嬉しかったです」
試合前はいつも緊張するが、リングに上がると落ち着くことができる。いわゆる“スイッチが入る”タイプらしい。
「デビュー戦は特に緊張したんですけど、入場したらお客さんのあたたかい拍手が聞こえてホッとしました」
試合では劣勢になることが多い。それでもなんとか反撃すると拍手がもらえる。それが力になって、もっと頑張ることができる。もともと負けん気も強く、性格的にもプロレスに向いていると自分でも思う。
コスチュームの色はピンクをベースに黒が入る。普段の服装でも黒が必ず入っており、本人のこだわりだ。団体としては新人らしいピンクと白を考えていたが「美蘭から黒を入れたいと3回言われまして」とスタッフは笑う。結果、ちょっと大人びて引き締まった、強気なイメージが出た。