濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
中学1年生の女子プロレスラー誕生「リングでは“この野郎!”って気持ちが出ます」 新人・美蘭の闘いを同級生も応援中《特別グラビア》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/24 11:01
今年4月にデビューした美蘭。中学1年生の13歳だが、すでに初勝利もあげている
「バレエよりプロレスの方が向いてるかな(笑)」
7月に入って初勝利。目を引くのはデビュー戦から使っている“その場飛び”のムーンサルトプレス。エルボー、ドロップキックといった基本技も遠慮がなくて思い切りがいい。このあたりは中学生とはいえ、やはり井上京子、ジャガー横田の流れというべきか。
習っていたバレエの発表会はひたすら緊張するだけだったそうだ。でもプロレスは伸び伸びできる。プロレスとバレエ、練習してきたことを人前で見せるのは同じなのだが。何が違うと思いますかと聞いてみると「自分の気持ちを出すかどうかだと思います」と美蘭。
「プロレスだと“この野郎!”とか“絶対やり返す”みたいな気持ちをそのまま出していいんです。そこがバレエと違いますね。自分にはプロレスの方が向いてるかな(笑)」
中2のライバルと“抗争勃発”?
そんな美蘭に、早くもライバルができた。以前から意識していた、アイスリボン所属の咲蘭(さらん)だ。リングネームが似ているだけでなくキャリアも近い。咲蘭は昨年7月のデビュー。学年は美蘭の一つ上だが、咲蘭は早生まれだから年齢は同じ。4カ月の違いしかない。
ディアナの道場マッチに続き7月18日のアイスリボン横浜大会でもタッグで対戦。咲蘭が握手を拒否したところから始まり意地むき出しのエルボー合戦で観客を沸かせた。試合は美蘭と組んだHimikoがキクにフォール勝ち。しかし収まらない美蘭と咲蘭は試合後も掴み合う。インタビュースペースでの美蘭は「次はシングルでやりたいです」と目をギラつかせた。
中1と中2の“抗争勃発”というと、何か微笑ましい気もする。しかし本人たちにとっては、お互いが誰よりも負けられない、負けたくない相手だ。共通点は気の強さ。これからディアナとアイスリボンの名物カードになっていくだろう。
3年間しか使えない“肩書き”を大事に
レスラーとしてはまだまだ発展途上。美蘭によると「いま一番、背が伸びてる最中です」とのこと。トレーニングで筋肉をつけて、いずれ大人の選手にもパワーで対抗できるようになりたい。最大の目標はディアナのシングル王座。じっくり時間をかけて強くなって、20代でチャンピオンにと考えている。
ただ先輩レスラーからは「自分の個性を活かすプロレスをしなさい」と教えてもらった。今の自分の個性ってなんだろうと考えたら、やっぱりそれは「若さ」じゃないかということになった。中学生だという理由で注目されても、それはそれで大歓迎。3年間しか使えない肩書きを大事にしたい。中学1年生の夏は一生に1回だし、デビュー初年度の闘いも今しかできない。その“かけがえのなさ”のようなものまで含めて、彼女のプロレスの魅力なのだと思える。
(撮影=杉山拓也)
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