オリンピックへの道BACK NUMBER
劇団四季・浅利慶太から「水泳をやめたら駄目だ」藤本隆宏の無名下積み時代を支えたオリンピック思考「4年というスパンで考えられた」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/26 17:01
NHKドラマ『坂の上の雲』広瀬武夫役などで知られる俳優の藤本隆宏。俳優となる前は水泳のオリンピアンでもあった藤本に話を聞くと…
演劇界の大御所たる蜷川と言えば、厳しい演技指導でも知られていたが、藤本はその洗礼を浴びることはなかった。
「優しかったです。怒るに値しない俳優だったというか。台詞もあまりなかったし。でもことあるごとに『四季!』と言われました(笑)。『四季、何やってるんだ、心を入れて喋れ』と言われたこともあります。四季とメソッドが違いましたし、まだ技術が伴っていなかったのでただ声を出すだけだったからでしょうね」
水泳で培った経験があるから希望も持てた
その後もオーディションを受けて、通れば出演しながら年月を重ねたが、大きな役を手にするには至らなかった。
「不安の方が大きかったです」
だが、不安だけではなかった。支えは水泳で培った経験にあった。
「幸いオリンピックを経験することができたので、4年に1回というスパンが自分の中にあって、ひと月ふた月という期間ではなく、4年で考えられた。それがあるから希望も持つことができた。そのうちに少しずつ少しずつ台詞が増え、一小節が二小節になって……。やればできる、は水泳が教えてくれたことです」
そう語る藤本だが、演劇の世界に入ってからは自身が水泳選手であることを隠し続けていたという。それは何故なのか。
<#3に続く>
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