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“5弱のセ・リーグ”で特に苦しい…中日に“2人の救世主候補”「外れの外れの外れのドラ1」「日系初のMLB監督を父に持つ…」
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byNanae Suzuki
posted2022/07/20 11:01
セ・リーグ最下位に沈む中日にさらなる苦難が待ち受けていた。後藤駿太とルーク・ワカマツは窮地を救えるか?
中嶋聡監督になって、守備固めや代走要員としての起用も減ってきた。オリックスは何とかもう一花咲かせる場を探すべく、各球団にトレードを打診。その話に乗ったのが中日だった。オリックスが望んだ石岡諒太との交換トレードが7月8日に成立。二軍戦での調整をへて「中日・後藤」のデビューとなった。
救世主候補2)父は日系初の“MLB監督”
一方のワカマツは、日系五世のアメリカ人で来日2年目。「野球の手ほどきはすべて父から受けた」という父の方が、日本での知名度ははるかに高い。ドン(ドナルド)・ワカマツは日系初のMLB監督である。2009年から10年途中で解任されるまで、イチローが在籍していたマリナーズを率いている。ルークもマイナーリーグでプレーしていたが、父の勧めもあってルーツのある日本行きを決断した。
7月16日までは二軍にいた育成選手が、一夜にして支配下→一軍→5番打者で先発と立ち位置が激変したのは運も追い風となった。離脱した高橋は内野手、マルティネスは外国人。内野全般をこなせ、外国人枠が適用されるワカマツに白羽の矢が立った。チームの不運は自身の幸運。背番号は96に決まったが、ユニホームは間に合わず、育成の210番のまま出場した。いかに緊急昇格だったかが伝わってくる。
もっとも抜擢人事を呼び込んだのは、ラッキーボーイだっただけではなく、ワカマツの実力があればこそ。二軍では出場こそ28試合ながら、打率は.328。くわえてOPSが.952と非常に優秀である。立浪監督がいきなりクリーンアップを任せたのも、数字の裏付けがあったのだ。
17日の試合ではワカマツの四球と後藤の移籍後初ヒットでチャンスをつくった。翌18日のDeNA戦(バンテリンドームナゴヤ)では、後藤が6番から3番に昇格。しかしいずれもヒットは打てず、ワカマツは脇腹の違和感で途中交代した。19日にいったん出場選手登録を抹消されたが、怪我から回復し、正しい背番号「96」のユニホーム姿で再び戦列に加わったその時こそ、という思いは強い。
チームの大ピンチに昇格し、期待される2人の新戦力。どちらも活躍すれば人気が出ること間違いなしのイケメンでもある。せめて「5弱」に仲間入りできるようにと、ファンは願っている。外れの外れの外れのドラフト1位と、MLB元監督を父に持つ男が、果たして苦しむ立浪ドラゴンズの救世主となれるか。
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