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「ずっとヘルニアに苦しんでいました」サニブラウン23歳が明かしていた、絶不調だった東京五輪の“その後”《世界陸上100m日本初ファイナリスト》
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/07/17 17:00
オレゴン世界陸上で男子100m日本人初の決勝進出を果たした、サニブラウン・アブデルハキーム(23歳)
「日本とは違うんですけど、フロリダ大学の環境も恵まれすぎていたというか。大学はチームという側面が強くて、試合では、一年のなかで全米学生選手権でさえ結果を出せばよしというような風潮があったんです。そうするとどうしても他の記録会が疎かになってしまう。1本、1本のレースを自分のために大切にしたいな、と。ドーハの世界選手権の結果(準決勝でスタートでつまずいて5着敗退)に満足できなかったというのもあって、この環境にいたらトップ選手には追いつけないと思いました。
それに大学は授業がほとんどリモートになっているので、卒業するために単位をとろうと思えばいつでも戻れるので、それよりプロアスリートとして活動を優先したいと思ったんです」
世界のトップスプリンターが集うチームはどんな雰囲気なのか。オフは「近くには映画館ぐらいしかないし、フロリダは暑すぎて部屋にいることが多い」といい、オンラインゲームをしたり、ネットフリックスでドラマやアニメ、映画を見たりしているという(ネットフリックスで最近のオススメは「THE VOICE」の最新シーズンだとか)。だが、チームメイトと意外なスポーツを楽しんでいるようだ。
「みんなでボウリングにはいきますね。自分のスコアは150~180くらい。うまい? いや全然ですよ。トレイボンもけっこうやるし、チームメイトは200くらいザラですから。一番うまいのはマービン(・ブレイシー)でいつも240とか出していて、マイボール、マイグローブも持ってますからね。『お前ら、また行くの?』ってくらい通ってます(笑)」
東京五輪の“絶不調”の裏側「ヘルニアに苦しんだ」
昨夏の東京オリンピック、サニブラウンは100mでは出場を逃し、200mでも予選落ち。本来であれば主要メンバーのはずだった4×100mリレーもスタンドから見守った。21秒41という平凡なタイムもそうだが、すべてがかみ合っていないように見えた。いつもと違ってキレも力強さもない走り、どこか覇気のないコメント。単なる不調なのか、何か原因があるのか。コロナ禍でアメリカにいたサニブラウンを取材できたメディアが少なく、また本人が多くを語らなかったこともあり、その真相は不明だった。