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「球団で仕事もらえるかな」クビ前提で話し合う選手たち…「育成のホークス」が抱える“枠が少なすぎて一軍に上がれない”問題
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/09 06:00
ともに育成ドラフト出身の千賀滉大と甲斐拓也。三軍制を発足した2011年以降、多くの主力選手を生み出してきたが……
つまり、育成38名に対して空いている支配下枠は「4」しかない。当初からかなり狭き門となっていたのだ。そうしていると藤井皓哉が3月22日、田上奏大が4月7日に支配下登録へ移行された。
一生懸命前進しているつもりなのに、トンネルの出口の光がどんどん小さくなっていく。
気になる“育成選手のモチベーション”
ある日、育成選手同士がこんな会話をしているとの噂話が飛び込んできた。
「今年でクビになったらどうする?」
「スタッフとか、球団で仕事もらえないかな」
「何か仕事は紹介してもらえるでしょ」
ホークスには数々の育成出身のスター選手を生んできた歴史がある。「育成のホークス」の通り名もずいぶんと浸透した。だが一方で、その健全な育成環境を失いつつあるのではなかろうか。
今シーズンは上記の黒瀬だけでなく、育成選手の健闘が非常に目立っている。大卒4年目左腕の岡本直也は昨季まで左肩痛もあり公式戦出場ゼロだったが、今季は故障が癒えてウエスタンで16試合4勝0敗、防御率1.26と文句なしの成績を残す。先発、リリーフの両方をこなしている点も評価されるはずだ。同じ大卒4年目の右腕・重田倫明も30試合に登板して2勝3敗4セーブ、防御率2.25。先日支配下入りを果たした中村亮が27試合1勝1敗、防御率2.45だったから決して引けを取らない。
ソフトバンクでは従前より「一軍で戦力となりうるか」が、育成選手を支配下登録する基準と公言している。もちろんチーム事情によりすべてを叶えるのは不可能だが、今季に関していえばアピールや結果に報いてあげられる環境を整えられていたのか。「育成のホークス」は今、足元を見つめなおす岐路に立っているのではなかろうか。
ただ、それを断行するならば、今オフは選手契約において厳しい選択を迫られることになるだろう。正直複雑だが、四軍制に向かう中では覚悟しなければならないことなのかもしれない。
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