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「球団で仕事もらえるかな」クビ前提で話し合う選手たち…「育成のホークス」が抱える“枠が少なすぎて一軍に上がれない”問題
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/09 06:00
ともに育成ドラフト出身の千賀滉大と甲斐拓也。三軍制を発足した2011年以降、多くの主力選手を生み出してきたが……
結局、昇格したのはすでに支配下登録されていた中谷だった。5月6日のロッテ戦(ZOZOマリン)ではビハインドの9回に代打で出場し、起死回生の同点2ランを放っている。阪神にいた17年にはシーズン20本塁打の実績もあり、かつては「将来の虎の4番」と目されていた。長打力ではチームトップレベルの能力を持つ。
でも「状態のいい」黒瀬が昇格出来なかったのはどこか解せない。チームに必要な戦力ならば、中村亮のように支配下登録すればいいではないか――。そのように考えたファンは少なくないだろうし、筆者は少なくともそう思った。
だが、事は単純ではない。中村亮の支配下登録によって、ソフトバンクの支配下選手数は69名となった。上限は70名である。
「まだ1枠ある」か「あと1枠しかない」か。
球団としては今月末の補強期限ぎりぎりまで万が一に備えるということで後者を選択したのだろう。球団側視点に立てば、筆者もそれは支持できる。
とはいえ育成選手の立場から考えると、やはり腑に落ちないのだ。
開幕時に「育成38名」に対して「支配下の空き4枠」
こんな懸念は、早い時期から抱いていた。それは22年シーズンの陣容が固まった時からだった。
2月1日の春季キャンプインの時点でソフトバンクの支配下登録枠はすでに66名も埋まっていたからだ。
一方で球団では近い将来の四軍制導入を見据え、その準備段階として今シーズンは三軍拡充を打ち出していた。そのため昨秋のドラフト会議では育成ドラフト史上最多となる14位指名まで行うなど育成選手の保有数を大幅に増やした。
前年の21年春季キャンプイン時点での育成選手は22名。それが今季は育成ドラフトに加えて中南米から10代プロスペクトも獲得して育成38名でスタートを切ったのだ。