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プロ野球PRESSBACK NUMBER
ヤクルト塩見泰隆の“天然エピソード” 社会人野球の名門と交渉時に…大学時代の監督「あいつ、ガソリンスタンドで働くと思っていたんです」
posted2022/07/08 11:02
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Nanae Suzuki
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「最近のヒーローインタビューを聞いていると本当に感激しますよ。あいつが喋れてる!って。今でも毎年オフになるとここに挨拶に来てくれるんですけど、礼儀とか人との会話とか、しっかりしましたよね」
唐澤監督はそう言って笑う。2012年、帝京大入学時の塩見は、「極端に言ったら、挨拶もできないような感じ」だったと振り返る。
「規則を破るとか、人に悪さをするようなことは全くありません。ただ天然というか抜けてるというか……。いろんなことが起こりましたよ。言えないこともありますけど(笑)」
「俺は自主練なんかやらねえよ! ってフリをして…」
一見するとちゃらんぽらんで不真面目だが、バットとボールを持たせるとその目の色が変わる。野球に取り組む姿勢を見ていると、「いい加減」の仮面に隠された、完璧主義な一面が見えてきた。
「野球に関しては集中力がすごいんです。バッティングであれば相手の配球、どういう攻められ方をしているかとか、深く考えている。打撃理論にも彼なりのこだわりがあって、そこまで考えなくてもいいんじゃない? というところまで突き詰めているんです」
全体練習が終わると、塩見は居残り練習をするチームメートを横目に「ちーっす!」と真っ先にグラウンドを後にする。しかし実は、一番乗りで戻った寮で一人黙々とバットを振っていることに唐澤監督は気づいていた。
「人前ではやらないんです。俺は自主練なんかやらねえよ! ってフリをして、本当は一人で室内練習場で打ち込んだりトレーニングをしている。周りには、あいつ全然練習してないな、と思わせている。強がって見せるというか、そういうところがあるのかな。(社会人野球の)ENEOSに進んでからも、突然電話がかかってきて“練習させてください!”って。“そっちでやればいいやん”と返すと、“オフの日に練習してるの、恥ずかしいじゃないですか”なんて言って。あいつはコソ練派なんですよ」