酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
巨人の素直な苦労人ウォーカーは「外国人スカウトの新鉱脈」? メジャーと無縁もスゴい強打+素人同然の守備に「亀井コーチ効果」
posted2022/07/05 06:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
筆者は3月27日、東京ドームで巨人-中日戦を見た。開幕3戦目、巨人で注目したのは新外国人のグレゴリー・ポランコだった。パイレーツひと筋の強打者で、打率は低いながらも長打力、足があることで評判だった有名選手だ。
9回、もう1人の新外国人であるアダム・ウォーカーの名前がコールされた。打席に立ったウォーカーのヘルメットの下からは長いドレッドヘアーがはみ出していた。
「巨人のドレスコードはどうなった?“紳士たれ”はやめたのか?」
そんな風に思った。この打席は一邪飛に終わり、巨人には実績ある内野手のウィーラーもいる。「お試し期間」が終われば、この選手は二軍に落ちて、そのままおしまいなのではないか? と思ったのだが――。
ウォーカーは3Aでさえもレギュラーになれなかった
そもそもウォーカーのキャリアは極めて異例だ。
2012年大学からドラフト3巡目(全体97位)でツインズに入団。この年は打者の当たり年で、ジョーイ・ギャロ、コーリー・シーガー、マット・オルソン、カルロス・コレアらMLBの中軸打者がたくさん出た。
しかしウォーカーはなかなか出世できなかった。マイナーのAクラスで27本塁打109打点と長打力を発揮したが、三振が多く荒っぽい打者だった。
2017年からはブレーブス、オリオールズ、レッズ、ナショナルズとチームを渡り歩く。だがAAAでさえもレギュラーになることなく戦力外となり、2018年に米独立リーグ、アメリカン・アソシエーションのカンザスシティ・Tボーンズに移籍した。
アメリカではMLB傘下にAAA、AA、A+、A、ルーキーと5階層のマイナーリーグがある。2020年に大リストラがあり、多くのリーグ、チームが契約を解除されたがそれでも13リーグ、154ものチームが存在し、選手数は4000人近くになる。
そしてその外側に、MLB機構に所属しない独立リーグがある。
給料支払いが滞るのも普通な独立リーグでMVP
アメリカ、カナダに6つのリーグ、80チームが存在する。経営は不安定で、給料の支払いが滞ることもある。ウォーカーが所属したアメリカン・アソシエーションは2020年MLBのパートナーリーグになり、MLB機構からの支援を受けているが、恵まれた環境とは言えない。
ウォーカーは2019年、同じリーグのミルウォーキー・ミルクメンに移籍。この年から22本、22本、33本と本塁打を量産した。2020年、21年は連続で本塁打王を獲得し、リーグのMVPにも選ばれた。
とはいっても、米独立リーグのレベルは高くない。