酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
巨人の素直な苦労人ウォーカーは「外国人スカウトの新鉱脈」? メジャーと無縁もスゴい強打+素人同然の守備に「亀井コーチ効果」
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2022/07/05 06:00
今や巨人打線に欠かせないウォーカー。独立リーグなどアメリカで培った打撃と、亀井コーチとともに向上した守備により日本で花開いた
2021年でいえばウォーカーのチームメイトでMLBでのプレー経験があるのは51人の選手中、野手1人、投手2人。やはり独立リーグは“MLBのピラミッドからはじき出された選手たちのリーグ”となる。
しかし2020年、MLBは新型コロナ禍対策として、ペナントレースを162試合から60試合に圧縮するとともに傘下のマイナーリーグを「全休」にした。マイナーリーガーの中には独立リーグに流れた選手もいる。そこでスカウトたちも独立リーグに注目した。そんな中でウォーカーの活躍もクローズアップされたわけだ。
年俸3400万円は格安だがウォーカーにしてみれば
NPBに来る新外国人選手の主なルートは、MLB、マイナーリーグ、KBO(韓国プロ野球)、キューバ国内リーグの4つ。独立リーグ経由で来る選手もいるが「元メジャーリーガー」が多い。昭和の時代はともかく、メジャー昇格がなく独立リーグで直前までプレーしていた選手がNPBと育成ではなく、本契約するのは珍しい。しかも毎年のようにMLBの有名選手を獲得する巨人ではなおさらである。
年俸3400万円は外国人選手としては格安だが、それでもウォーカーにとっては2012年のドラフトで49万ドルの契約金を受け取って以来の大金だった。
無印に近かったウォーカーだが、4月12日、4回目のスタメンとなった那覇でのDeNA戦で5打数3安打1打点と活躍してから評価が変わった。17日の阪神戦ではガンケルから決勝の3ラン、以後もしり上がりに成績を上げると6月には7本塁打11打点、打率.330をマーク、最近は2番に座って初回から好機をつくることも多くなった。
問題は外野守備だった。
可愛げのある性格だったから亀井コーチも……
ジャクソンビル大時代は一塁と外野を兼ねていたが、プロ入団後、いろいろなチームを渡り歩いたウォーカーは、コーチの指導を本格的に受けることがなかった。しかも独立リーグでは野手コーチは1人しかいない。実質的に素人同然でNPBにやってきたのだ。
巨人のコーチ陣は「守れない」というだけで、失格の烙印を押すこともできたはずだ。
しかし昨年まで現役外野手だった亀井善行コーチは、ウォーカーに飛球の追い方、守備のポジションの取り方から送球までを手取り足取り教えた。ウォーカーが手を差し伸べたくなる素直で可愛げのある性格だったからではないだろうか。