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「私のプロレスラー人生、中野たむに出会えてよかった」スターダムの“妖精”なつぽいが愛憎渦巻く金網マッチの先に見た「最高なストーリー」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2022/07/03 11:01
6月26日、名古屋国際会議場で行われた中野たむとなつぽいによる金網マッチ。数年間にわたる両者の因縁が、情念むき出しの名勝負を生んだ
「たむちゃんのことは嫌いだけど、今のたむちゃんはもっと嫌い。ベルトと共に、ドロドロした感情むき出しのたむちゃんも消えちゃったのかな?」
1年前にできた目標は、先を走り続けるたむの存在なくして達成できない。しかし、なつぽいは最近のたむの姿に不満を感じていた。昨年末に上谷沙弥に敗れベルトを失ったたむは、3月の両国国技館で上谷へのリベンジに失敗し、シングルのタイトル戦線から遠ざかっていた。
コズミック・エンジェルズのリーダーであることは変わらないものの、なつぽいはたむの現在を「保護者のような感じ」になっていると評した。挑発の中では「引退でもするの?」という言葉まで飛び出したが、他ならぬなつぽい自身が、「今のたむは上を目指していないように見える」ということを最も受け入れたくないようにも思えた。
たむにとって、なつぽいは絶対に負けられない相手だ。それは一切変わっていない。挑発が挑発を呼び、2人はシングル2番勝負でぶつかり合うことになった。しかも、1戦目の名古屋国際会議場大会では、メインイベントのために用意されていた金網を使ってケージマッチを戦うことになった。
金網マッチという“因縁の終着地点”を超えて
6月26日、3カウントを奪った後に金網を登ってエスケープに成功しなければならない、というルールのもと、2人は立ち上がりから激しく感情をぶつけ合った。金網は叩きつけられた体の形に歪み、そこからさらに相手を網目に押しつけていった。双方譲らず、3カウントが入ってもエスケープはさせてもらえない。とうとうケージ最上部で張り手の応酬を繰り広げ、共にリングに落下してしまった。
ダブルダウン状態になったものの、直後には膝をつきながら互いに相手の顔を網に食い込ませた。たむの必殺技であるトワイライトドリームが決まっても決着せず、そこからVSD(バイオレット・スクリュー・ドライバー)を食らってもなお、なつぽいはたむを追ってケージを這い上がった。最後はたむが、ケージ最上部でのあまりにも長い宙吊りスリーパーホールドでなつぽいを締め落としエスケープに成功。試合は終わった。