限界を超えてなお意地で戦い続けているかのような2人は、そこからまた張り手やスープレックスの応酬を繰り広げ、最後はなつぽいが何度も体勢を崩しながらも、掟破りのVSDでたむをマットに叩きつけ、ニ―ドロップ式のフェアリアルギフトからフェアリーストレインでついに勝利。「終わった……」という安堵感と温かい拍手が会場を包んだ。

　試合後、たむは手を差し出して握手を求めたが、なつぽいは握り返そうとして悩み、最終的にそれを拒否。「1回勝ったくらいで、たむちゃんを超えたなんて思ってないよ」と言い放ったその顔は晴れやかだった。

「こんな最高なストーリー、終わらせるつもりないから」

　一方、“絶対に負けられない相手”に敗れてしまったたむだが、充実した表情も見せた。限界を超えて「中野たむの上」を目指すなつぽいの姿は、日本武道館のメインで勝利しスターダム・ドリームを成し遂げた自分自身とも重なっていた。

「みんなね、本当の自分の強さに気づいてないと思うんです。その強さのリミッターを解除するの（相手）は人それぞれで、たむにとってはジュリアだったし、なっちゃんにとっては、そのリミッターを解除するのはたむしかいないと思ってました。なっちゃんは、たむじゃなきゃダメでしょ」

　超えようとする側と、超えられまいとする側ながら、相手にそれをより難しくされるのはまんざらではない。むしろ、だからこそ特別な関係であり続け、自身がさらに上へと駆けていく力にもなる。

　そんな2人は7月9日の立川ステージガーデン大会で組まれているユニット全面対抗戦で再び顔を合わせる。これが1勝1敗の決着戦となるか、あるいは。

　昨年の4月に「これが始まりだと思う」と目標を定めたなつぽいは、大きな1勝を記録して、こうコメントを残した。

「私のプロレスラー人生、中野たむに出会えてよかった。でも、こんな最高なストーリー、終わらせるつもりないから」

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