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井上尚弥も巻く“ボクシング世界ベルト”に秘められたナゾ…製作担当者が語る「工場の場所や製作過程は明かされていません」
posted2022/07/02 06:01
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
AFLO
リングを沸かせる格闘技の世界には、王者の象徴としてなくてはならないものがある。
そう、チャンピオンベルトだ。
私も子どもの頃、新日本プロレス最高峰のIWGPベルトが1億円もするという、都市伝説のような話を聞いた記憶がある。
では実際に、ベルトはいくらするのか。
「ベルトは金属部分が真鍮でできていて、革は本革、もしくは合皮です。プロレスは手荒く扱うこともあるので、しっかりした本革が多いですね。ウチは依頼主さんとデザインを決めてから、海外の工場に発注しますが、一概にいくらとは言えません。ただ製作費はウチでは基本カスタマイズが15万円から。宝石を使わなければ、60万円の間に収まります」
こう語るのは、ビータイトプロモーションの取締役で、同社のベルト部門・チャンプレックスを運営する瀬端義美さん。
同社のベルトを手がけるのは、井上尚弥らが巻くボクシングの世界ベルトも製作する腕利き職人集団。当然、品質は最高峰だ。ただ瀬端さんによると「工場の場所や製作過程は明かされておらず、私たちは信頼できる仲介者を通じてやりとりをするだけ」なのだとか。こうしたミステリアスなところも、チャンピオンベルトらしいと言えるかもしれない。
RIZINのベルトの大半を製作
チャンプレックスが扱うベルトは、プロレス、ボクシング、総合格闘技など多岐に及び、今年は“聖地”後楽園ホールの60周年を記念して4月16日に開催された“還暦祭”ベルトを製作。RIZINのベルトも大半を手がけている。たまたま同社にあった女子スーパーアトム級のベルトは同社史上最重量の5kg超! 持たせてもらうと、重みで腰がぐらついた。
チャンピオンベルトはみんなの憧れ。「王者にはトロフィが贈られることもありますが、やっぱり喜ばれるのはベルトです。後援者がご祝儀込みでお金を出して認定団体からベルトを買い取り、王者になった選手に贈ったりする。だれもが腰に巻いて記念撮影をしたがるので、祝勝会も盛り上がるんですよ」
近年は格闘技に限らず、多くの業界からベルトの製作依頼が舞い込むようになった。
「同僚への退職祝いに贈ったり、不動産業界やホストクラブでは売り上げナンバーワンの社員、スタッフに贈られたり。企業のイベント用に頼まれることもあります。ベルトは映えるので、話題づくりに最適なんです」
謎めいた光り輝くベルトには、人々を高揚させる不思議な力が宿っているのだ。
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