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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
武尊30歳が明かす「(天心戦で)負けた瞬間は“引退しよう”って思ってました」それでも休養を選んだ本当の理由《単独インタビュー》
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/06/29 17:04
那須川天心との一戦を終えた武尊に、現在の心境などについて聞いた単独インタビュー
「負けた瞬間は“引退しよう”って。なのに…」
試合を終えて帰宅しても、思ってもいなかったことがあったと武尊。
「勝っても負けても、この試合が終わったら燃え尽きるんだろうなと思ってたんです。試合を見返すこともないし、何もやる気がしないんだろうなって。それくらいこの試合にかけてきたし、時間をかけて減量や追い込み(練習)をしてきたので。負けた瞬間は“引退しよう”って思ってましたし。
なのに家に帰ったら、すぐ試合の映像を見てたんですよ。気がついたら対策を考えてました。“こうやったら勝ててたんじゃないか”とか“コンディション(調整)はもっとやり方があったかも”とか。試合自体に後悔はないんですけど“俺、全然燃え尽きてないな”と。それは自分でもびっくりしましたね。時間が経ってもその気持ちは消えてなくて」
人生のすべてをかけた那須川戦を終えても、ファイティング・スピリットは残っていた。武尊が思っていた以上に、武尊は根っからのファイターだったということか。
「何をしたら燃え尽きるのか、自分でも分からないですね。ただ“もし最後の試合をするならこういう試合”というのはあって、それを目標に生きられてるっていうのはあります。こういう闘いができたら満足なんじゃないかって」
もう、負けることは怖くない
その舞台や相手のイメージもある。会見で発表した休養も、そこに向かうためのものだ。ただそれはまだ具体的に動いている話ではないから、公表はしなかった。会見では「UFCを目指すという噂もあるが」という質問も出たが「今は何も答えられないです」としている。「僕にはいろんな可能性があると思ってるので」と。
K-1に新たなスターが出てきたら、その選手と闘いたくなるかもしれない。あらゆる可能性を否定したくないし、復帰の時期も含めて何かを決めることで「やらなければならない」と自分を追い詰めたくないという思いもある。恐怖と責任感で闘う武尊はもう終わりだ。もう、負けることも怖くはない。
「まずは一回、“無”になりたいですね。ずっと何かに追われて苦しかったし怖かったので。それがなくなった時に見えてくるものもあると思います。そうなった時の自分はもっと強くなれる気がします」
東京ドームでは絞り出すようなコメントしかできなかった。まだ気持ちが揺れている部分もある。けれどこれから「最悪のことを言えば、このまま治らないのかもしれない。でも1カ月で治ったら1カ月で復帰したいと思うかもしれない」。
今の武尊には“何も決まっていない”ことが希望なのだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。