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「パニック障害とうつ病と診断されていました」武尊30歳が休養会見でも話さなかった本音「涙が出なかった。これで全部失うんだって」

posted2022/06/29 17:03

 
「パニック障害とうつ病と診断されていました」武尊30歳が休養会見でも話さなかった本音「涙が出なかった。これで全部失うんだって」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

那須川天心との一戦を終えた武尊に、現在の心境などについて聞いた単独インタビュー

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Kiichi Matsumoto

那須川天心との“世紀の一戦”に敗れた武尊。6月27日の会見では心身の回復のための休養を発表した。会見直後、大一番を終えた心境や現在の那須川への思いについて聞いた。《全2回の単独インタビュー/後編に続く

 格闘家にとって負けは“死”を意味する。武尊はずっとそう考えてきた。

 負けたら終わり。すべてを失う。2012年6月、Krushのリングで京谷祐希にTKO負けを喫したのを最後に、彼は勝ち続けてきた。常に「負けたら引退する」と決めてリングに上がってきた。

 京谷戦の10年後、今年6月19日に東京ドームで開催された『THE MATCH 2022』で、彼はついに敗れた。言うまでもなく、相手は那須川天心だ。立ち技軽量級最高峰の選手同士の対戦は、那須川が1ラウンドに左フックでダウンを奪い判定勝利。勝った那須川も負けた武尊も泣いていた。それだけ重い意味を持つ対戦だった。

 試合から8日後、武尊は記者会見を行なった。試合直後、会場のインタビュースペースではまともに話せる状態ではなく、短いコメントを残しただけで取材陣との質疑応答はなかった。そのためファンに気持ちを伝える場を武尊自身も欲したという。

 発表されたのは休養に入ることと、K-1スーパー・フェザー級タイトルの返上。「ケジメをつけるため」であり、自分がベルトを手放すことでK-1の活性化につながればいい、次世代のスターに出てきてほしいという気持ちもあるという。常にK-1を背負ってきた武尊らしい考え方だ。

心も身体も限界…休養は必然だった

 誰が相手でも打ち合って、前に出て、KOを狙う闘いをしてきた。のめり込み、思い詰める性格でもある。試合だけでなく練習も激しい。“10年間負けなし”の代償として、彼は満身創痍になっていた。

 拳の腱を痛め、腰は分離すべり症に。ヒザの靭帯損傷も。「公表するか悩んだんですけど」と前置きして、数年前から精神科に通院していたことも明かした。

「パニック障害とうつ病と診断されていて。昔からうまく付き合いながらやってきたんですが、この数年間は自分の心が耐えられるのかという不安もあって。知らず知らず自分の心が壊れていくのを感じました。格闘家としてだけじゃなく、治さないとこれからの人生が壊れてしまう」

 心も体も限界。夜中に病院に運ばれて「これは自分だけの問題じゃない」とも思った。ケガを放っておくと日常生活に支障が出る可能性もある。休養は必然だった。ただファンにとっても救いなのは、引退を明言しなかったことだ。

「休養は前向きな意味。心と体のコンディションを正常に戻して、そこから新しいチャレンジができたら」

【次ページ】 試合が終わった瞬間「これで全部失うんだなって」

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