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クラブ馬主に夢はあるのか? 出資者のリアルな収支を検証… “5年でマイナス80万円”でも「これ以上の娯楽はない」と断言するワケ
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byPhotostud
posted2022/06/18 11:04
ジオグリフとイクイノックスのワンツーとなった2022年の皐月賞のように、クラブ馬がGIレースで上位を席巻することも珍しくない
気を取り直して2017年生まれの2世代目に臨んだOさんだったが、抽選に外れたこともあって出資できたのは1頭(一口4万8000円)のみ。同馬も10戦未勝利で引退し、2年で4頭に出資してわずか1勝という厳しい現実を味わった。
勝ち上がり率は大幅アップも、肝心の収支は…
「2世代目まではまったく知識がなく、抽選も外れてばかりで苦しかったです。3世代目からは、『丈夫そうな馬』というだけでは厳しいことを理解して、リスクも取りにいこうと考えました」
2018年生まれの3世代目は、一口3万6000円で出資した牡馬が見事デビュー戦に勝利。また、一口6万円で出資した牝馬も地方交流競走で初勝利をあげ、その後1勝クラスも勝ち上がった。
さらに今年のクラシック世代にあたる2019年生まれの4世代目は、出資した5頭のうち4頭がすでに中央で勝利。うち1頭(一口6万円)は2勝をあげており、今後さらに上のクラスでの活躍が期待できる存在となっている。
Oさんの場合、現2歳世代(5世代目)までの合計出資金額は80万円弱。さらに2歳以上の現役出資馬が12頭(うち数頭は複数口)いるため、維持費(飼葉代や預託料)と会費を含めて毎月2万5000円ほどのコストがかかっている状況だ。
「維持費はさまざまな要因で変動するため概算になりますが、今のペースだと年間で30万円弱くらい。私は複数のクラブを掛け持ちしているので、そのぶん会費が余計にかかってしまうんですよね。出資金を除いてもこれだけの費用ですから、すべてを合算して分配金でプラスにする、というのはなかなか厳しいミッションです(笑)」
「定期的に走ってくれれば維持費は回収できる」
JRAの賞金は世界的に見てもずば抜けて高い水準を誇っている。5着までに交付される本賞や“内国産馬奨励賞”に加えて、未勝利戦でも6着から9着まで交付される“出走奨励金”、またレースに出走したすべての馬に交付される“特別出走手当”も存在するため、体感的には「定期的にレースに出てくれれば、未勝利~1勝クラスの馬でも維持費くらいは回収できる」(Oさん)という。
「ちなみに2021年の配当の総額は、控除前で約17万円でした。今年は過去最高に調子がよくて、5月時点ですでに約10万円の配当がありました。クラスが上がっても戦えそうな馬が何頭かいるので、下半期にはさらに期待が持てそうです。出資金の回収はともかく、年間30万円弱の維持費と相殺して、多少なりともプラスになってくれれば……」