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クラブ馬主に夢はあるのか? 出資者のリアルな収支を検証… “5年でマイナス80万円”でも「これ以上の娯楽はない」と断言するワケ 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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posted2022/06/18 11:04

クラブ馬主に夢はあるのか? 出資者のリアルな収支を検証… “5年でマイナス80万円”でも「これ以上の娯楽はない」と断言するワケ<Number Web> photograph by Photostud

ジオグリフとイクイノックスのワンツーとなった2022年の皐月賞のように、クラブ馬がGIレースで上位を席巻することも珍しくない

 仮に分配金によって維持費が相殺されても、5年間に出資した総額80万円弱は“丸損”ということになる。いかにJRAの賞金制度が充実していても、「クラブ馬主で儲けるのは難しい」という現実がよくわかる数字だ。

激化する出資競争「抽選の当選確率が1%なんて例もザラ」

 Oさんは「これだけマイナスしている僕が言っても説得力はない」と前置きしつつ、こう語った。

「本気でプラスを目指すのなら、いわゆる“相馬眼”を鍛えることはもちろん、最初の1世代目から入念に計画を練っていかないといけないのだな、と。あとは愛馬がアーモンドアイやクロノジェネシスのようにドカンと稼いでくれる奇跡を願うしかないですね(笑)。

 ただ、最近は競馬人気の高まりで出資希望者が激増していて、有名クラブでは会員の間の競争も非常に激しくなっているんです。現状、新規会員が人気の募集馬に出資するのは不可能に近いでしょうね。たくさん出資して実績を残さないと優先権を得られないですし、抽選の当選確率が1%なんて例もザラにありますから。もちろん、募集の段階で人気があったからといって走るわけではないんですが……」

 クラブによってシステムは異なるものの、「最優先で好きな馬に出資する権利」を得るために、1000万円以上の出資実績が求められることもあるという。相当な幸運に恵まれなければ儲けの出ない“金融商品”であるにも拘わらず、これだけ多くの競馬ファンを熱狂させるクラブ馬主の魅力とは、いったいなんなのだろうか。取材の最後にそう問いかけると、Oさんは損をしているとは思えない口ぶりで「お金には代えられない楽しみ」を力説した。

「調教のレポートに一喜一憂して、出走登録や枠番の確定にソワソワして……。独身の私が言うのはおかしいかもしれませんが、本当に自分の子どものように感じるんですよ! 走っても走らなくても、とにかくかわいくてしょうがないんです。今のところマイナスとはいえ、年間20万~30万円程度のコストでこんな気持ちを味わえる娯楽を、少なくとも僕は他に知りません。もし愛馬がGIを勝とうものなら、間違いなく絶叫すると思います」<#1「山本昌が語るクラブ馬主の醍醐味」から続く>

#1から読む
シャフリヤールへの出資を即決! 山本昌が語るクラブ馬主の醍醐味と“走る馬の見抜き方”「血統や馬体も見ますが、特に重視しているのは…」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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