ところで、現在の男子5000mの日本記録は大迫傑（Nike）が持つ13分08秒40だが、遠藤は日本歴代2位にランクインした。両選手の共通点として挙げられるのは、アメリカで武者修行を積んだこと。それともう1つ、渡辺康幸氏の教え子という点もある。

大迫傑、2015年の世界陸上にて　©Getty Images

　とはいえ、渡辺氏はこんなことを口にしている。

「彼ら2人とも、海外に出てから強くなった。我々のノウハウは、所詮は13分20秒までですから。そこから13分一桁とか12分台を目指すのであれば、今までのやり方では限界がある。その限界を僕自身が感じていました。だから、彼らには海外に行かせました。本人たちが頑張ってくれているから、記録も出ているのでしょう」

　自身の限界を知っているからこそ、渡辺氏は彼らを快く海外へと送り出すことができた。それは、決して指導を放棄しているわけではない。それぞれの力を伸ばすための道を示してあげることも、指導者の役目と考えてのことだ。

「やっぱり何年に1人の逸材を伸ばしてあげることは、指導者としての責任でもある。それに、日本陸上界の将来を考えた時に、大迫君や日向君が持ち帰ってきたノウハウは、この先、5年後、10年後に必ず生きてくると思います」

大迫傑に続く“世界と渡り合う姿”を見せられるか

　アフリカ勢になかなか太刀打ちできずにいたが、GGNで遠藤が見せたように、糸口は少しずつ見えてきている。世界のトップとは、まだまだ30秒以上も開きがあるが、遠藤自身、その差を一歩ずつ着実に詰めていくつもりだ。

「12分台をもちろん目標にしているんですけど、まずは日本記録を更新し、次は13分5秒台と、段階を踏んでいきたい。そうすれば、おのずと12分台も見えてくるのかなと思います」

　ひとまず今夏の世界選手権は決勝進出が目標だが、12分台をステップに、数年後には世界と渡り合う遠藤の姿があるかもしれない。