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大学駅伝ではなく五輪を選んだ“5000mのエース”遠藤日向…指導者が明かす兄弟子・大迫傑との“意外な共通点”
posted2022/06/18 11:02
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Satoshi Wada
日本選手権男子5000m決勝。独走で最後のホームストレートに入った遠藤日向(住友電工)は、優勝を確信し、右手を高々と突き上げて喜びをあらわにした。
「ゴールする前から嬉しさが込み上げてきました」
今夏の世界選手権オレゴン大会の参加標準記録(13分13秒50)をすでに突破している遠藤は、見事に優勝して日本代表の座を射止めた。
ライバルを横目に“大学進学ではなく”実業団に進むも…
1年前の日本選手権は、初優勝を果たしながらも、悔し涙を流した。
中学時代から各世代でトップを走ってきた遠藤は、多くのライバルが関東の大学に進学するなか、高校卒業後すぐに実業団に進んだ。それは3年後に迫っていた東京オリンピックに出場することを目標にしていたからだ。
しかしながら、日本選手権で優勝しても、オリンピックの出場条件を満たせず、目標が達成できなかった。並々ならぬ思いがあったゆえ、初めてシニアでつかんだ日本一の喜びよりも、目標の東京オリンピックに届かなかった無念さのほうが大きかった。
「東京オリンピックはずっと目標にしてきた舞台だったので、すごく悔しい思いをしました。今年の世界陸上には“絶対に僕が出てやるんだぞ”という気持ちを持って、昨年の日本選手権が終わってからトレーニングをしてきました。2020年は秋冬にケガをしてしまったんですけど、去年はしっかりトレーニングを積むことができました」
悔しさをバネに変えた1年間
昨年の日本選手権を終えた後は、7月にホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会に出場し、その後にオフを挟んだ。そこから秋に再始動し、オレゴン世界選手権に照準を定めてトレーニングに励んだ。社会人2年目からは、アメリカの強豪クラブ、バウワーマン・トラック・クラブ(BTC)でトレーニングを積んでいたが、昨年の秋冬は日本で過ごした。それでも、そのノウハウは身についており、12月のエディオンディスタンスチャレンジでは13分16秒40の自己ベスト(当時)をマークした。
「秋冬にスピード持久力の練習に特化し、ベースをしっかりと作ることができた。その土台ができた上で、スピード強化に移行できた。トレーニングが順調にできていたということです。また、アジア室内選手権(遠藤は3000mに出場予定だった)が延期になったことによって、不幸中の幸いといいますか、もう一度作り直すことができました」
遠藤を指導する渡辺康幸監督がこう話すように、当初の予定に若干の狂いは生じたものの、災いが福に転じた。