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ヘロイン所持で逮捕後「刑務所サッカー大会」イタリアが恨む“W杯韓国寄り判定”モレノ主審の業が深すぎ「20年後の今も私の心は…」 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byClaudio Villa/Getty Images

posted2022/06/18 11:01

ヘロイン所持で逮捕後「刑務所サッカー大会」イタリアが恨む“W杯韓国寄り判定”モレノ主審の業が深すぎ「20年後の今も私の心は…」<Number Web> photograph by Claudio Villa/Getty Images

日韓W杯での“迷ジャッジ”後、刑務所に入った経験を持つモレノ氏。これほどまでに“人間の業”を体現した人物も珍しい

 2010年9月、ニューヨークのJFK空港でヘロイン6kgを違法所持していた彼は逮捕され、2年6カ月の収監生活を送った。犯罪の理由は明確に話さなかったが「あのときはそうせざるを得なかった。脅迫されていた。妻の身の安全もかかっていた」とだけ言葉少なに語った。

 ただ、監獄での日々を問われると、モレノの口調はどこか朗らかになった。

「刑務所の中では時間がうなるほどあったので、サッカー大会を企画、運営しました。サッカーの国際舞台ではあらゆる種類の人間と仲良くなれる“コミュ力”が必要で、それが監獄でも役に立ちました」

「お前さんが裁いているのは犯罪者たちの試合だぜ」

「審判? もちろん何試合もやりましたよ。きちんと反則をとり、警告も退場も出しました。笛を吹く度に、周りの観衆(=囚人)たちから私へ野次が飛ぶのです。『オイオイ、お前さんが裁いているのは犯罪者たちの試合だぜ』、つまり無法者にルールを求めるなんて馬鹿げていると。ですが、私は毅然とジャッジを続けました。ルールはルールですから。私は、こうだと決めたら曲げるのが嫌な性分なのです」

 自分は根っからのレフェリーであり、受刑者のトーナメントであろうとW杯と同じ判断基準でジャッジした、とモレノは胸を張った。少なくとも、監獄時代を語る彼の言葉に嘘は見えない。

 2015年、FBIによる「FIFAゲート」捜査で大量の逮捕者が出たとき、日韓大会での試合操作疑惑も再燃した。

 捜査資料を入手したイタリアのメディアは、調書の内容から、韓国対イタリア戦の第4審判だったモロッコ人審判ムハンマド・ゲザスが、当時のFIFA会長ヨゼフ・ブラッターと副会長鄭夢準の命を受けたアフリカサッカー連盟会長イッサ・ハヤトウの送り込んだ“現場のお目付け役”で、主審モレノと2人の線審に韓国有利の判定を下せと圧力をかけていた疑いがあると報道した。これが真実なら、モレノの判定は操られていたということになる。

インタビューで“1つだけ引っかかること”が

 だが、あの日グラウンドで笛を吹いていた男は、知らぬ存ぜぬを貫き通している。今回の『ガゼッタ』紙インタビューでも「試合前に外部からの接触は何もなかった」と強調し、人生で八百長や買収に関わったことはない、とも言い切った。

「正しい判定もそうでない判定も、審判としてのキャリアで下したすべてのジャッジに私は責任を持ちます。だが、どちらか一方を有利に導こうとしたことは一度もない。何者にも、私の仕事に口出しすることを許したことはありません」

 モレノが嘘をついている可能性は否定できない。

 リモート・インタビューには、1つ引っかかることがあった。

【次ページ】 インタビューで“1つだけ引っかかること”が

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