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ヘロイン所持で逮捕後「刑務所サッカー大会」イタリアが恨む“W杯韓国寄り判定”モレノ主審の業が深すぎ「20年後の今も私の心は…」 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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photograph byClaudio Villa/Getty Images

posted2022/06/18 11:01

ヘロイン所持で逮捕後「刑務所サッカー大会」イタリアが恨む“W杯韓国寄り判定”モレノ主審の業が深すぎ「20年後の今も私の心は…」<Number Web> photograph by Claudio Villa/Getty Images

日韓W杯での“迷ジャッジ”後、刑務所に入った経験を持つモレノ氏。これほどまでに“人間の業”を体現した人物も珍しい

 何度か見返す内に気づいたが、韓国人なら初見で指摘できたかもしれない。

 モレノは20年前の韓国対イタリア戦の試合内容を諳んじ、具体的に選手名や場面を挙げながら、誤審だったか否かについて己の見解を述べた。

 退場させたトッティやゴールを取り消したトンマージを初め、ゲーム最初の警告を出したDFココや序盤にPKを与えたDFパヌッチ、先制点を決めたFWビエリやFWデル・ピエロなどアッズーリの選手たちの名前をすらすらと口にした。

1人も韓国の選手の名前を挙げなかった

 だが、モレノはただの1人も韓国の選手の名前を挙げることがなかった。

 単に知名度の差とは考えにくい。W杯の審判団は担当試合の両チーム情報を入念に下調べして備えるのが常だ。事実、モレノは韓国対イタリア戦で仕事をしたきりの外国人副審のフルネームを(責任転嫁するためかどうかはわからないが)はっきりと覚えていた。

 アジア圏の響きに馴染みが薄く記憶に残りにくいから、ということはできる。だが、あれほど騒がれた世紀の誤審試合で、当事者のモレノがただの1人も韓国選手の名前を出せないのはむしろ不自然だろう。

 あの試合のジャッジの標的はイタリアに絞られていたのではないか。疑念は残る。

 屈辱から4年後、イタリアはドイツW杯で世界一になり、昨年には1968年以来の欧州王者にもなった。

 それでも、あの遺恨は消えない。日韓W杯以来20年、イタリア代表は韓国と交わりを絶ち、いかなるマッチメイクも断り続けているが、いつかW杯の舞台でいざ再戦となれば、カルチョの国は闘志で沸騰するだろう。ただし、その対戦は少なくとも2026年までお預けだ。

イタリアのW杯予選敗退……残念なことです

「イタリアのカタールW杯予選敗退? 残念なことです。エクアドルでは、北マケドニアがどこにあるかさえ知らない人間ばかりだというのに」

 モレノの言葉は慇懃無礼にも思えて、どこまでもイタリア人の神経を逆撫でする。

「20年後の今でも私の心は晴れやかです。あの韓国対イタリア戦で、トッティは退場になるべくしてなったのです。私のジャッジは試合結果に何の影響も及ぼさなかった」

 本当にそう思っていますか? 記者の声が気色ばんだ。

「もちろん」

 モレノは眉一つ動かさなかった。

〈第1回から続く〉

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〈W杯史に残る誤審劇〉韓国vsイタリアから20年…「レフェリー人生最高の試合の1つ」忌み嫌われた審判モレノが認めない“2つのミス”

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