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全米オープン開幕前の会見でなぜ怒声が……“サービス精神あふれるナイスガイ”が残した汚点《ゴルフ界を分断する新ツアー騒動》 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2022/06/16 17:00

全米オープン開幕前の会見でなぜ怒声が……“サービス精神あふれるナイスガイ”が残した汚点《ゴルフ界を分断する新ツアー騒動》<Number Web> photograph by Getty Images

会見で厳しい質問が飛び交い、声を荒げるシーンもあったミケルソン。米メディアとの緊迫したやりとりが続いた

 振り返れば、PGAツアーに対抗する新ツアー「リブ・ゴルフ」の創設構想が浮上し始めたのは一昨年の末ごろだった。

 PGAツアーのジェイ・モナハン会長は選手たちの流出を当初から警戒し、「向こうのツアーに出たら、出場停止処分を科す。メンバーシップ剥奪もある」と強く警告した。

 しかし、そんなモナハン会長やPGAツアーの人々の感情を逆なでするかのように、リブ・ゴルフ創設構想にどんどん傾倒していったのが、ミケルソンだった。

 その後、ミケルソンはリブ・ゴルフを率いるグレッグ・ノーマンらとさらなる交流を深め、PGAツアーに背を向けてリブ・ゴルフへ移るための準備を着々と進めていった。その背後では2億ドルの「移籍料」が支払われたと言われている。

 一部の米メディアからは「ミケルソンがPGAツアーの他選手たちに声をかけては勧誘し、説得した」と報じられている。ミケルソンによるリクルート活動の成果なのかどうかは定かではないが、リブ・ゴルフ初戦にはPGAツアーの選手がミケルソンを含めて合計17名も出場した。

メンバーシップを返上する選手もいる中で……

 PGAツアーは「ツアー規定に違反した」として、17名のメンバーシップをサスペンデッド(資格停止)とする処分を下した。

 そのうちの10名は処分が出る以前に自主的にメンバーシップを返上しており、PGAツアーはその10名をフェデックスカップ・ポイントリストから外した上で、今後、どんなルートからもPGAツアーの大会には出場できないことを発表した。

 しかし、ミケルソンを含む残りの7名については、サスペンデッドとはしたものの、今後の出場可否には言及していない。というのも、この7名はメンバーシップを返上せず、保持する意思を示しているからだ。

 中でもPGAツアー通算45勝を挙げてきたミケルソンは、メンバーシップのみならず、通算20勝を挙げた時点で獲得した生涯シードも「そのまま残してほしい。今後も活用したい」と主張。法廷闘争も辞さない構えゆえ、PGAツアーは訴訟対策として、あえて表現を曖昧にしていると思われる。

 ミケルソンは、リブ・ゴルフに出る道を選んだからという理由で、これまでPGAツアーで努力して手に入れた生涯シードの権利を行使できなくなるのは納得できないとしている。

【次ページ】 故郷の期待も裏切った“奔放”な言動

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