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全米オープン開幕前の会見でなぜ怒声が……“サービス精神あふれるナイスガイ”が残した汚点《ゴルフ界を分断する新ツアー騒動》
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2022/06/16 17:00
会見で厳しい質問が飛び交い、声を荒げるシーンもあったミケルソン。米メディアとの緊迫したやりとりが続いた
しかし、忘れてはならないこともある。2002年に通算20勝目を挙げて生涯シードを獲得して以来、ミケルソンはシード権や義務試合数をまったく気にすることなく、伸び伸びとツアーに参戦してきた。好きなときに好きなことを奔放に行なってきた。
長女の卒業式を理由に全米オープンを欠場すると言って世間を騒がせたこともあった。
アリゾナ州立大学出身のミケルソンは「第2の故郷」で開催されるフェニックス・オープンの顔的存在だったにも関わらず、彼は同週にサウジアラビアで開催された大会を選び、フェニックス・オープンを欠場。「故郷」の期待と信頼を裏切ったりもしてきた。
PGAツアーに出場しつつ、シニアのチャンピオンズツアーにも参加。その合間を縫って、サウジアラビアやノーマンらと「打ち合わせ」も重ねてきたことになる。
すべては、生涯シードによって、今後の出場資格にもスケジュールにもまったく不安がなく、余裕があったからこその奔放な言動だった。
その意味では、ミケルソンはこの20年以上もの間、生涯シードの権利をすでに存分に行使し、その「うまみ」を十分に享受してきたことになる。
ファンやスポンサー、長年戦ってきたツアーに対するサービスや感謝は、選手にとって義務ではないが、スター選手に求められる責務ではある。その責務を果たさずして権利ばかりを主張するのだとすれば、その姿勢は、間違いなくミケルソンの「汚点」となる。
リブ・ゴルフがミケルソンに求めたもの
なぜ、リブ・ゴルフはミケルソンに2億ドルもの莫大な移籍料を支払ってでも彼を獲得したかったのか。
今週の全米オープン初日に52歳の誕生日を迎えるミケルソンに、毎試合、熱い優勝争いを期待しているわけではない。
そう、リブ・ゴルフはミケルソンに他選手たちを呼び込むための「最高のマネキン人形」の役割を求め、「リブ・ゴルフに行けば、こんなにハッピー」という姿を示すモデルになることを期待している。
その1つとして、「リブ・ゴルフに移籍してもメジャー大会にもちゃんと出られるよ」という実例を示すことは、リブ・ゴルフが彼に期待していた大きな役割だったはずだ。
しかし、ミケルソンは今年2月に公表された発言が大問題と化したことで、スポンサー契約を失い、戦線離脱と休養を宣言。その流れで、5月の全米プロは自主的に欠場した。
それは、リブ・ゴルフの期待に大きく背いたという意味では、ミケルソンのリブ・ゴルフに対する「失点」だった。
だが、ディフェンディング・チャンピオンでありながら全米プロを欠場する事態を招き、大勢のファンや全米プロ関係者の期待に背いたことは、ミケルソンの大きな「汚点」となった。
そして今週、全米オープン開幕前の会見は、ミケルソンと米メディアのトゲトゲしく激しいやり取りになった。