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ぶら野球BACK NUMBER
トホホ…巨人助っ人“残念伝説”「クロマティになれなかった男たち」まさかのヒーローインタビュー拒否事件、メジャー本塁打王も1年でクビ
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph bySankei Shimbun
posted2022/06/01 17:10
1993年に来日したジェシー・バーフィールド。86年にア・リーグ本塁打王を獲得しているだけにその期待は高かったが…
1年でクビ「期待も吹き飛ばした大型扇風機」
始まりはとにかく順調だった。あの阪急やオリックスで活躍したブーマー・ウェルズとはマイナー・リーグ時代に同室で仲が良く、来日前に生活面のアドバイスをもらっていた。そして、日本に馴染もうとバーフィールドは、「この味は向こうにはないね。アメリカに戻るときは必ずまとめて買い込んでいくよ」なんて三ツ矢サイダーを毎日欠かさず飲むわけだ。
4月10日の横浜との開幕戦で、試合前にロッカールームのイスに座りながら涙を浮かべて手術からの復帰を喜ぶ背番号29の姿。そのデビュー戦でのちの“大魔神”佐々木主浩から公式戦初本塁打を放つと、バーフィールドにはアサヒビールから1年分(365本)の三ツ矢サイダーが送られたが、記念のホームランボールは左手首手術の執刀医へプレゼントしたという。
だが、その故障箇所はまだ完治していなかった。ハーフスイングも思うように止められず、日本人投手の変化球攻めに三振の山を築いてしまう。「左手首はまだ痛む……。チームに迷惑をかけられないから、万全な状態になるまでは……」と弱気な発言も目につくようになり、6月19日の阪神戦ではついに代打を送られる。
それでも怒りをエネルギーにするのではなく、「自分でもガッカリしてるよ。しかし、打てないんだから仕方がない」とうつむく悩める主砲。長嶋巨人のVが絶望的になった夏場以降にようやく打撃も上向き、10月16日の横浜戦で25号アーチを放つと「うん、ジーンときたよ……」と感慨深げに語った元メジャーの本塁打王。今にして思えば、周囲の過剰な期待とは裏腹に、本人はまずは左手首手術からの復帰というテーマと戦っていた節がある。
外野守備ではMLB強肩ベスト3にランクインしたバズーカ送球を幾度となく披露したが、打撃ではシーズンを通して「期待も吹き飛ばした大型扇風機」とマスコミの餌食になり続ける。26本塁打、53打点はチームトップだったが、規定打席到達者中リーグ最下位の打率.215、最多三振の127に終わり1年限りで解雇となった。
そして、メジャー241発男をあっさり見切った長嶋巨人は、そのオフにFAで新たな主砲・落合博満の獲得に動くのである。
<後編に続く>
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