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「1日3食が当たり前」に“大食い魔女”菅原初代58歳が考える違和感…“来年還暦”でも現役を続ける理由「大食いは、お金が目的ではない」
text by
音部美穂Miho Otobe
photograph byWataru Sato
posted2022/06/03 11:02
現在は盛岡でパン店を営む菅原初代さん。幼い頃から感じていた食事に関する疑問や、現在の生活などについて聞いた
「1日3食」に菅原が疑問を抱いていた理由
「だって人によって消化能力やお腹の空き方は違うし、胃袋の大きさだって違う。それなのに、『朝、昼、晩と決まった時間に食べることが身体によい』と押し付けられるのは、すごく違和感があったんですよ。
『朝食はきちんと食べないとダメ』ってよくいいますよね。でも、私の場合、朝食を食べると具合が悪くなる。子供の頃はずっと起立性低血圧だったんですが、当時はそういった病名がきちんとついていなかったから、朝礼で倒れちゃうのも『朝ご飯を食べていないからだろう』って先生に言われたりして。
でも、私の場合、頑張って朝ご飯を食べているのに倒れるんですよ。だから、『ムリして朝ご飯を食べても倒れるなら、食べる意味ないじゃん』って。中学生ぐらいまでは何とか頑張って食べていたんですが、高校生になってからは朝食は食べなくなりました。
朝食を食べることの是非を問いたいのではないんです。朝食を食べたほうが体調がいい人は食べればいいし、そうでないなら食べなければいい。それぞれの身体や生活スタイルにあった食べ方をなぜ認めてくれないのか、ずっと疑問でした」
「左利きはみっともないから右に直しなさい」
世間のマジョリティの価値観を頭ごなしに押しつけられることの苦しさ。菅原は食べること以外でも、それを子供の頃から感じてきた。利き手を左から右に矯正させられたこともその一つだという。
「今でこそ、利き手を無理に矯正することで生じるデメリットも知られていますが、当時は『左利きはみっともないから右に直しなさい』という風潮でした。だから、鉛筆もお箸も右にせざるを得なかった。
授業中、板書するのも時間がかかるし、書くことに集中しないといけないので、何をやっているのか頭に入ってこない。それもあって、もともと苦手だった勉強がどんどん分からなくなっていって……。
両親は仕事で忙しくて基本的にほったらかしでしたし、頼っても仕方ないと思っていた。
ある時、図書館で本を読んで利き手を矯正することで心身に様々な悪影響が生じる可能性があると知り、自分の悩みの原因が少しわかった気がして。他の人が誰も調べてくれないから、自分で調べるしかなかったんです」