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米国でも「岩手」が話題…花巻東出身、菊池雄星が語る“大谷翔平、佐々木朗希、麟太郎への思い”「恩師のご子息とこっちでやりたい(笑)」
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2022/05/31 11:03
今季初対決では、大谷を3打数無安打に抑えたブルージェイズの菊池雄星
当初は抵抗も…カットボールを辞めた理由
マリナーズからブルージェイズへ移籍し、菊池の投球も大きな成長を遂げている。
昨今、先発投手は少なくとも4つ以上の球種を高いレベルで操る必要があると言われている。大谷を例にとれば、直球、スライダー、カットに加え、カーブは速いものと遅いものがあり、スプリットも2種類ある。球種的には7つを投げ分ける“レインボー”だ。だが、今季の菊池に限ってはわずか3つしかない。直球、スライダー、チェンジアップ。球種の数で言えば、まるで1970年代の先発投手のようだ。
データ全盛の時代。打者は配球を読み、決め打ちにかかる。決めにかかった球を確実に仕留める技術は年々上がっている。そんな時代背景でたった3つの球種で挑むスタイルはなかなかユニークだ。菊池は言う。
「去年まではカットボールに頼っていました。でもこのチームに来て言われたんです。カットに対するOPSは.900台だと。直球は.500台なんだよと」
当初、菊池には抵抗もあった。左のパワー系で鳴らす投手だが、直球の平均は95マイル(約153キロ)しかない。メジャーでは平均的と言える球速で、カットボールを捨てることはできるのか。転機は5月4日のヤンキース戦だった。
「カットを投げるのをやめてみたんです。最初は不安でしたが、投げてみると直球でファールもとれるしカウントを整えられる。これでやってみようかとなりました」
この試合は6回を3安打1失点。移籍後初のクオリティースタートを果たし、その後は波に乗った。
「圧巻だった」エンゼルス監督も菊池の投球を絶賛
相乗効果もあった。カットボールはどうしても体が横振りになり、腕も下がり気味となる。カットを捨てたことで縦軸回転が安定し、直球の精度が増した。5月28日のエンゼルス戦では、87球中、直球が54球、スライダーが28球、チェンジアップは5球しかなかった。打者が球種を絞りやすい組み立てでも、5回2失点で試合を作った。
「素晴らしい成績を残している打線の中で、ストレートで押せていけたというのは、今シーズン一番大事にしているボールですので、自信になりました」